美徳の不幸 part 2

Pity is akin to love.

研究者の「5月病」

自分の研究とは直接関係ないけど、5月になり、何となくやる気が出て(例年、すぐに失速するが)、気になったものをまとめ買い(研究費が下りてきて、気分が大きくなったので)。

沖縄研究において、このような視点は欠かせないであろう。

植民地期から人気があった女優、文藝峰の評伝。映画史もちまちま購入しています。

知り合いの渡辺直紀先生が翻訳。日本に徴兵され、ソ連に抑留され、その間に帰るべき「祖国」は分裂し、帰国しても過酷な運命が・・・、という内容の帯文を見ただけで、頭を垂れるしかない。

新井先生の似た内容の本を何冊も読んでいるのに、買っちゃうんだよなあ。

広島で被爆したタカラジェンヌの評伝。これまでも小説や映画の元ネタになってきた人物ですね。

台湾の神社(の再建)に関する章があるので購入。

この4月から同僚になった人が激プッシュするので、遅ればせながら購入。僕もこれで、卒論指導が多少はまともになるか?あまり期待はしないで欲しいが。

ゴシップ好きの僕としてはやはり見逃せない本棚、これは。名前だけ知っていても、実は柳原白蓮に関して、あまり知らないもんな。

こんなタイトルの本、僕がスルーできるはずもなく。

行っておきますが、「ヌード」に関しての章はほとんどありません(笑)。編著者の井上章一先生が文字通りざっくりと「描いて」います(読めば判る)。

鈴木祥子@玉川上水ロバハウス「A Fantasy of "Epic" Days」

数ヶ月の間を置いて、再び鈴木祥子さんのライブに行って参りました。今回の会場は、玉川上水の「ロバハウス」というところ。元々古楽器の演奏をしているところらしく、面白い作り。内部は洞窟とかそういうモチーフで、壁一面の楽器も興味深かったです。会場は約80名ほどでぎゅうぎゅう詰め。今回のライブのタイトルは「A Fantasy of "Epic" Days」というもので、祥子さんのEpic Sony所属時代を振り返るという趣向(その第2回目)。つまり、初期の曲が中心であり、それを恐らく30余年間聴いている僕を含めたリスナーが集う、という濃い空間。

ロバハウス外観

準備されている楽器はアップライトのピアノと、祥子さんのウーリッツァー(電子オルガン)のみ。今回は完全unplugged、つまり生声&生音。まあまあ狭い会場とは言え、これには驚きました。前回が、完全なスタジオライブでしたから、ある意味真逆。
祥子さんは白いブラウスとグレーのスカートという出で立ちでご登場。前口上で「今日はEpic時代の曲をやっていくわけですが、あの頃は自分の声量などを考えずに作ったものですから、(マイクなしで)最後まで保つかどうか(笑)」とおっしゃいましたが、結論から申し上げますと、保ちました。改めて、単純にヴォーカリストとしてすごいなあ、と思いました。以下、セットリストを書いていきますが、曲の後ろの(P)はピアノ、(W)はウーリッツァーを指します。

壁に掛かっている古楽器

1)ぼくたちの旅(アカペラ・手拍子→P)(Candy Apple Red)
「一曲目に、Epic時代の最後の曲を保ってきてしまいました(笑)」
2)Swallow(W)(水の冠)
「これは4月の曲ですね。この曲は、リクエストもよくいただき、ついまたこれかあ、とかと思っちゃうんですけど、今日は、昨日この曲を書いたつもりで歌います(笑)」と歌ってくれたのですが、ウーリッツァーが「ご機嫌斜め」で、どうも基盤などが浮いているのか、音が割れたり、まるで近くにスネアドラムを置いているような振動音がしたので、「やりなおし」ということで
3)Swallow (take 2)(P)
が改めて演じられました。その間に、ウーリッツァーは上部にタオルと板を置いて、それごとガムテープで固定されるなどの「応急処置」を経て、以降は大丈夫な状態になりました。京都の「拾得」でのライブの時は、店にある「漬物石(名物の「漬物ピラフ」の漬物は実際に作られていたのでしょうか)」を載せていたこともありましたが、今後「漬物石」に代わる何かが望まれるところです。
4)青い空の音符(P)(Long Long Way Home)
ライブで聴くのは珍しい曲かも。作詞は大貫妙子さん。この曲が特にそうでしたが、今回祥子さんは過去の自作を歌うに際して、イントロを結構アレンジしていて、一瞬「これ、何の曲だ?」と戸惑うことも多かったです。
5)苦しい恋(P)(Candy Apple Red)
しっとり目の前曲から一転して、この激し目の曲。祥子さん自身も途中で演奏を止めて「さっきの曲(青い空の音符)とこの曲、年数にして7年くらいの間があるんですが、今歌い始めて、この人どうしちゃったの、というくらいの変わりようですよね(会場爆笑)」確かに。
6)あの空に帰ろう(W)(Long Long Way Home)
この曲は戸沢暢美(まさみ)さんの作詞。「戸沢さんが既に亡くなっていることを数年前に知って、すごくショックで・・・。実は同じアルバムの「水の中の月」という曲も、最初は戸沢さんの書いてくれた歌詞があったんですが、あまりにもダークな内容で、これはちょっと歌えない、ということで自分で歌詞を書いて歌った、ということもありました」という裏話も。祥子さんの「水の中の月」の歌詞も相当暗めですが、それよりって、どんだけ・・・遠くのファンは思ったことでしょう。
7)サヨナラの朗読 English ver. & Japanese ver.(W)(Viridian)
「これ、デビューアルバムの曲なんですが、その時は結構一生懸命多重録音でデモテープも作っていて、この曲は最初英語の歌詞を付けて歌っていたんですよね」と言って、その「デモテープヴァージョン」が1番だけ歌われ、その後は本来の「日本語ヴァージョン」へ以降。
8)Sweet Basil(W)(水の冠)
さりげなく不倫を歌っているこの曲、個人的には結構好きです。
9)危ない橋(W→P)(風の扉)
ウーリッツァーからピアノに移行しつつ。
10)Hourglass(P)(Hourglass)
この曲は作詞が杉林恭雄さん。アルバムのタイトル曲。すごくない政敵、と称されたこのアルバム、発売当初なぜか繰り返し聞いていたのを思い出します。既に亡くなった大学院の友人K沢君も、確かこのアルバムを褒めていたなあ。
11)チャイム(W)(Radiogenic)
「この曲は作ったときはアップテンポだったのが、結局落ち着いた(neatな)感じになって収められた」と祥子さん。客も少し、怖々とコーラス。何せ「生声」ですので、祥子さんの声をかき消しては、と皆さん配慮していた感じでしたね。
12)Happiness(P)(Hourglass)
「さて、しばらく封印していた曲を(笑)」と祥子さんが言うと、客も「ああ、もしかして」と阿吽の呼吸(笑)。「歌うと不幸になる(笑)、といわれていたこの曲、25歳、という言葉を入れるなとプロデューサーに言われケンカになったりしましたが、私はジャニス・ジョップリンの「Kozmic Blues」にインスパイアされたというか、自分の中の炎が、という感じで(作った)」「今回のライブ、Fantasyと名付けましたが、私がデビューしてからEpicを離れるまでの12年ほどですか、23歳から30代前半という、女性の人生で重要な期間というか、高低差もすごくあって、最早あの時間は昔すぎて私にはファンタジーなんですよね。でも、歌い直すと新たな発見があるし、こうして皆さんとつながれるというのはありがたい(大意)」と前口上があり、そこからジャニスが完全に乗り移った祥子さんのemotionalな曲の「入り」があり、今回は原曲通り「25歳」と歌われました。その後は
13)ときめきは涙に負けない(P)(Radiogenic)
14)波の化石(ファシル)(P)(Viridian)
「実は「Happiness」「ときめきは~」「波の~」はすべてFのキーなんです」と言い、そのままシームレスに
15)海辺とラジオ(P)(Snapshots)
で盛り上がり、この曲を終えホッと一息。ここで祥子さんが「何かリクエスト、あります?」と聞いて、以下の2曲が採用されました
16)My love, my love(W)(Radiogenic)request
17)あなたを知っているから(W)(Haevest)request
18)Good Old Dusty Road(W)(Snapshots)
祥子さんはトイトランペットを持参して、プップク吹いておりました。本編はここまで。以下はアンコールです。
e1)愛はいつも(W)(風の扉)
祥子さんは「Romances sans Paroles」のTシャツとジーンズにお着替え。この曲からシームレスに
e2)Farewell Song(P)
が歌われ、「もう何も辛いことはない」と今回のライブは締めくくられました。僕たちファンとしては「もう何も言うことはない」状態でした(笑)。お腹いっぱいです。
ここまでほぼ休憩なしで2時間強、歌いきってくださいました。そして会場先行発売のライブアルバム『歌う、聴こえる~そして10のメモワール Chanter, entendre et 10 memoires』を当然のように買う我々。帰宅して聴いたら、これまたいい音!実はこのブログもこのCDを流しっぱなしで書きました。

ピアノとウーリッツァー

祥子さんによると、エピック時代を振り返るライブ第3弾は6月以降に企画しているそう。刮目して待ちたいと思っています。

なお、ライブの後は大体ファン仲間と軽く打ち上げをするのですが、新宿に戻ったのに、まさかの「居酒屋難民」となり、打ち上げられなかったことだけが残念でした。完全に新宿、コロナ前の人出に戻っていますね・・・。

鈴木祥子「Syoko,/ The Lead Vocalist」@千駄ヶ谷Victor Studio

今日は久々の鈴木祥子さんのライブ。タイトルは「Syoko,/ The Lead Vocalist」というもので、このタイトルはRod Stewartの『Lead Vocalist』というアルバムから拝借したと祥子さんは言っていたでしょうか、今日は「ヴォーカリスト」に専念し、バックにはギタリスト(設楽博臣さん)とキーボーディスト(高野勲さん)の2人の、計3名のみのストイックな編成。

場所は「千駄ヶ谷Victor Studio」で、ミュージシャンのように裏口から入って、レコーディングスタディオに入りました。

レコーディングスタディオに入ったら、各座席にヘッドフォンが置いてありました。今日はこれをつけて、ミキサーを経由した音をリアルタイムで聞く、というライブ形式(オペレーターは中山佳敬さん)。僕はこういうのは初めてだったので、びっくりしました。

少し、リハーサルが長引き、予定よりも遅いスタート。今日の祥子さんの出で立ちは「赤いベレー帽、白シャツ、紺のスカート」というすっきりしたもの。個人的なことを言いますが、僕は「ベレー帽かぶった女性大好き侍」なので、凄く萌えてしまいました(笑)。でもこれは実は、ファーストアルバム『Viridian』の時のお帽子だったのでした。

第一部は「レコーディングセッション」で、祥子さんのデビュー曲「夏はどこへいった」を改めて「2023年版」としてダビングしながらレコーディングするのを我々が見学する、といった趣き。でも、祥子さんの「第一声」は以下の曲でした。

1)Tom's Diner(アカペラ)


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祥子さん曰く「私、デビュー時には和製スザンヌ・ヴェガという売り出され方をされたんですよね」。僕は「そういえばこの曲、某コーヒーのCMだったな」と思い出していました。


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この後、35年前のデモテープの音源が流され「実はこれ、さっきの曲が入っているスザンヌ・ヴェガのアルバム『Solitude Standing』の「Gypsy」という曲の歌詞に勝手にメロディを乗せる、という課題が私に出されて、その曲があるプロデューサーの耳に触れて、改めて川村真澄さんの歌詞がつけられたのが“夏はどこへいった”なんですよね」と裏話が披露され、その後しばらくトラックを重ねていく様子を僕たちが拝見するという「大人の社会見学」という感じの時間となりました。これだけこだわって、重ねて音が作られていくんだ、というのをリアルタイムで経験できました。

2)夏はどこへいった


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祥子さんは、以下の写真で言うと客席の向こうのブースでレコーディングでした(この写真は休憩中に撮りました)。「ファーストアルバムの時のような初々しさを出そうと思ったんですが、やっぱりふてぶてしさが出ちゃいましたね(笑)」と祥子さん。3,4回重ね録りをして完成したのを見届けて、第一部は終了、休憩時間にはコーヒーが振る舞われました(スザンヌ・ヴェガのCMのせいではないでしょうけど)。

第2部は“ライブ・セッション”と言うことで、ここからはブースから祥子さんも設楽さん、高野さんも出て来て、「ここ1年ほどで、ライブでEpic Sony時代を遡っていきたいと思いますので、今日は懐かしい曲を中心に、私はヴォーカルに専念してお送りします」と始められたのが

3)Goodbye, My Friend


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でした。続けて歌われたのが、ライブではめったにしないと祥子さんも言っていた

4)Little Wing

「実はこの曲、2ndアルバムの『水の冠』の時にできていたのですが、その時はペンディングになって、フォークっぽくガシャガシャ弾いていたのを、小林武史さんのアレンジで変わったんですよね」とのこと。

5)Sweet Sweet Baby

「アルバムのテイクも凄く気に入っている曲です」とのこと。

6)メロディ(withタンバリン)


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「おとなしい曲が続いたから」と、アップテンポなこの曲がセレクトされました。

7)とどくかしら

「この曲はジャズっぽいと言うか、ちょっとアルバムとは違う感じになると思います。そういう(アドリブ的なノリも)良いよね」と始められました。確かに違うアレンジでした。

8)サンデーバザール


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「この時期の歌詞は、川村真澄さんが書いてくれていたのですが、彼女の歌詞はみんな悲しい(笑)。当時は与えられたものをこなすのに精一杯でしたが、こんな歳(ここで笑い声が起き「何で笑うんですかぁ(笑)」と祥子さん)になると、一層身につまされる気がします」とのこと。

9)ラジオのように(withタンバリン)


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「盛り上がる曲って言っても、私の曲ではそんなに盛り上がらないですけど(笑)」と始められたのがこの曲でした。

10)両手いっぱい


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「この曲、あるアレンジャーの方がアレンジしてくださったのですけど、私が「なんか違う」と言い張って、菅原(弘明)さんたちと全取っ替えして、レコード会社の心証を悪くした曲です(笑)」とのことです。

11)優しい雨


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キョンキョンに提供した曲ですが、私がバッキングコーラスをやったキョンキョンの“夏のタイムマシーン”という曲、実はこのVictorのこの302でレコーディングしたんですよね。なんか不思議な縁を感じます」とのこと。

12)風の扉


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「実はこの曲も、川村真澄さんの歌詞がつけられていたんですが、自分の歌詞で歌いたいと思って、始めて作詞した曲です」「23,4歳くらいに“目指す場所はたった一つ”と思ってこういう歌詞を書きましたが、実際どういう場所にたどり着いたのか(自分でも判りませんが)」

本編はここまで。最後はアカペラで

encore)どこにもかえらない(withタンバリン)


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をみんなで手拍子しながら終了。

目の前で祥子さんが歌っているのに、ヘッドフォン越しにその声と音を聞く、という変わった「体験」でしたが、昔の佳曲揃いで、堪能しました。4月頃にライブがあるとのインフォメーションもありましたので、鶴首して、刮目して待つことにしましょう。

国際日文研の「大衆文化」研究を中心に

最近、国際日本文化研究センターが立て続けに「大衆文化」についての研究成果をまとめて出版している。卒論でそのあたりをやりたい学生もいたりするので、それを中心に色々学術書をまとめ買い。

 

 

 

今回買ったのはこの三冊。ほかにもカドカワから何冊か出ているので、そっちも後でチェックする予定。

日本の植民地支配においての「ラジオの役割」はこれまでもそこそこ調べられてきたと思うが、メディア論などを加味して、膨らみが増したと思う。

インドにおいて、「在家」なのに「修行」する「家住行者」についてのモノグラフ。

千葉大学の趙景達先生のゼミ生が集まって編まれた論文集。重厚な「東アジアのサバルタンスタディーズ」といったところか。

現代韓国のある意味「裏面」を暴いたドキュメント。

こちらは「在日朝鮮人生活保護」、という副題が語っているように、戦後日本における在日朝鮮人が味わった苦難の歴史の検証。

ビリー・グラハムというものすごく斯界では有名な牧師だが、日本ではほとんど知られていない人物の伝記として、楽しみ。

たまたま目に入ってきた。アメリカ人の文化人類学者が日本人夫婦の「Intimate Disconnections」(これが原題。どう訳すべきか)を調べたもの。

 

 

研究者仲間の編著を中心に

最近、研究者仲間の友人が複数所属している「戦争社会学会」というところが中心となって、岩波書店から「戦争と社会」というシリーズを出した。それを中心に購入した書籍のご紹介。

 

 

 

 

学部ゼミか院ゼミでいくつか選んで輪読するか。

以下のも知り合いが編者の社会学系の書籍。

18歳で大阪(堺)を捨てた(笑)とは言え、やはり関西、阪神の都市文化というテーマには惹かれてしまう。思った以上に分厚くてびびる。知り合いの川野英二さん編集。

これまた知り合いの髙谷幸さん編集の「実践報告書」といった趣の論集。

 

やはりジョン・ダワー先生のは買っておくよな。

ヤバい組織への潜入取材の本らしい。朝日新聞の書評で知り、購入。

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台湾の文化人類学的研究を中心に

新学期が始まって、予算は下りた今頃は、毎年浮かれて一気に本を買うことが多い。今回は、日本の旧植民地たる台湾に関する研究書をまとめ買い。元々植民地期の朝鮮を研究フィールドにしている僕だが、やはり比較対象として台湾研究は外せない、というか、年々重みを増してきている。

 

まずは三尾裕子先生編集のもの。友人も何人か執筆している。前者所収の真宗大谷派の台湾布教に関する論文や、後者のような「宗教変容」をさんこうにすることになるだろう。

文化人類学史も僕の興味の範囲なので。

 

 

植野弘子、上水流久彦先生編集の2巻本。買い損ねておりました。

韓国ソウルにある「景福宮」という宮殿のクロノロジー。多少の知識はあるが、僕は今まで建物に注目する事は少なかったので、試しに購入。

京大の田中雅一先生のお弟子さんが中心に編んだもの。知り合いもいますし、タイトルが格好良いのでつい購入(編集者も知り合い)。

副題が「現代モンゴルにおける宗教とナショナリズム」とあるので、これは買わねば、と思いました。

 

國學院大學日本文化研究所関連の皆さんの執筆(知り合い多し)。

主に恩師と先輩、後輩、同期が執筆。結構分厚いので驚いた。

というわけで、今回のお買い物帳でした。

鈴木祥子「拾得の熱い夜アンコール!“われても末に演らんとぞ想ふ。”」

2022年最初のライブは、またもや京都拾得での鈴木祥子さんのライブでした。今日は「われても末に演らんとぞ想ふ」と題されたもので、もちろんこれは百人一首崇徳院の「瀬を早み 岩にせかるる 滝川の われても末に 逢はむとぞ思ふ」をもじったもの。つい先月「われた(分かれた)」と思ったら、もう今月に「逢ってしまった」のでファンとしては嬉しい限り。いつものように以下ではセットリストを書いていきますが、今日の曲目は「各アルバムから1曲は入れる、というセットリストを用意(祥子さん)」とのこと。デビュー時から最近まで、祥子さんの三十数年を圧縮したような内容でした。

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いつもより早めにライブはスタート。「自分史上最もショートにしてみた(祥子さんのツイートより)」というショートカットで白い襟の黒いワンピース(もしかしたらセパレートだったかも)の出で立ち。今日はピアノ(P)とウーリッツァー(W)の二つの鍵盤だけというシンプルな舞台。ピアノの時は背を我々に向けて、ウーリッツァーの時は正面を向く、という形でした。曲名の末尾は収録アルバムです。
1)ラジオのように(P)『Radiogenic』
2)Happiness(P)『Hourglass』
「ねえどうして手を離すの」と始まるこの曲、「25年も生きてきたけど判らない」という歌詞、今日は原曲のまま歌われました。もうこの曲が生まれてから30年以上・・・。

「今日はアルバムから各1曲、と思ったんですが、何を選んでも、重いですよね、皆さんご承知の通り(笑)」「自分の中のそういう部分を吐き出す、というのが私の曲作り(の核)」みたいなMCの後、「久々にライブで広島に行った時、広島の人は私のことを憶えてくれているだろうか、という気持ちを曲にした」のが
3)Do you still remember me?(W)『Romances Sans Paroles』
なのだそうです。その次に「この手の曲を敢えて前の方で演ります」と言って始められたのが
4)完全な愛(W)『私小説
でした。これが大好きなライブ友達は「あ、リクエストの前に歌われちゃった」という気持ちもあったとのことですが。
5)イケナイコトカイ(W)『Love, painful love』
岡村ちゃんこと岡村靖幸の名曲。以前祥子さんはこれをカヴァーしていますが、ノリノリになった祥子さん(岡村ちゃんがちょっと憑依していたような気も)がつい我々に「コール&レスポンス」を求めてしまい「あ、そうか、今はそう言うのってダメなんですよね」という一幕も。call & responseはイケナイコトカイ?
6)ぼくたちの旅(W)『CANDY APPLE RED』
ここで少しだけアクシデント発生。祥子さんが歌詞を入力しているiPadの電源が切れたので、充電ケーブルを繋いでいる間「電源が入るまでリクエストタイム。何か聞きたいのありますか?」となったのですが、数曲のリクエストはスルーされ(笑)、
7)風の扉(P)『風の扉』
が演奏されました。立て続けに
8)Frederick(P)→(W)『鈴木祥子
で、前半は終了。少し休憩となりました。

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後半は
9)swallow(W)『水の冠』
で始まりました。「この曲と同じキーがCの曲」ということで続けて
10)あなたを知っているから(W)『Harvest』

この曲好きなファン、多いんですよね。特に中高年男性(笑)。「三井のリハウス」の曲でしたね、これ。「帰ってきて つばめのように わたしはずっと ここにいる」という歌詞があり、前曲の「swallow」とは「ツバメ」つながりですね。


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11)わたしの望み(W)『Love, painful love』リクエス
さっきの7曲目の前に出ていたリクエストなのですが、祥子さんがここでそれを採用。Puffy吉村由美さんに頼まれて提供した曲ですね。祥子さんは「メッセージソングとして書いた」とおっしゃっていました。
12)夏はどこへ行った(W)『Viridian』
祥子さんの「自分へのリクエスト」ということで、デビュー曲(1988年5月発売)のこれがチョイスされました。「もう、記憶の彼方になりそうな昔の曲ですけど、こうしてライブで歌って改めて命が吹き込まれるというか、そんな気持ちになれます」とのこと。


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13)逆プロポーズ(仮。)(W)『Sweet Serenity』
これをライブで聞くのは久々なような気が。
14)メロディ(W)『Long Long Way Home』
「これでアルバム一曲ずつやったはずですが、他にあったっけ?」と祥子さんがいうので、7曲目の時にも出されたリクエストですが、Bacharachの彼の名曲で本編は終了。
15)I say a little prayer(W)→アカペラ『Shoko Suzuki Sings Bacharach & David』リクエス
この曲はサビの部分が変拍子なので、「これ、変拍子の練習になるね」と祥子先生指導の下、我々は手拍子の練習。


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当然即アンコールの拍手で再び祥子さんが登場。

e1)The days like these(W)リクエス
最初のこの曲はさわりだけをさらっとやったのですが、なんと山下久美子さんへの提供曲。僕は判らなかったのですが、他の人に聞いて知りましたが、これをリクエストした人、何者?
e2)5 years, /AND THEN…(W)『Sweet Serenity』リクエス
「私、例えばメジャーデビューした時とか、結婚した時とか、このまま人生にはレールが敷かれていて、それに乗れば何となく生きていけるんだろうな、と思っていたんですが、実はそんなことないんですよね」「この曲の歌詞にあるんですが、道はやっぱり自分で作るものなんですよね」
と祥子さんはしみじみ自分の歌詞に込めた意味を解説なさり、サビの部分を繰り返し熱唱。

これからどこに行くのかな?
これからだれに逢えるのかな?
あたし自由になれたかな?
コドクの意味がわかったのかな?

道はどこかにあるのかな?
自分で作るものなのかな?
愛はどこかにあるのかな?
自分のなかに育てるものなのかな?

 

e3)風に折れない花(W)『Harvest』リクエス
「ちょうどこの曲を歌いたいな、と思ったんですよ」ということで、「あなたを知っているから」と並んで人気のあるこの曲を。しみじみしましたね。


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ここでアンコールも終わり、かと思ったら、ダブルアンコールを受けて下さって、祥子さんが登場。本当に最後の曲は、最近出た洋楽のカヴァー集から
e4)Love of My Life(P)『My Eternal Songs〜BEARFOREST COVER BOOK Vol.1〜』リクエス
言わずと知れたQUEENの名曲。間奏で、まるでハープシコードチェンバロ)のような細かい運指の旋律を付けていました。たまたまですが、ちょうど6年前、東京世田谷の松本記念音楽迎賓館で、そういう楽器メインのライブにも行きましたねえ。
というわけで、今日のライブはここで終了。

ライブの後、まだ時間があったのでライブ友達と軽く談笑。リクエストが通らなくて少し悲しがっていた友人に「リクエストは、アーティストがその時に歌いたい曲を当てるゲーム」「アーティストは神様、と思っているなら、すぐにリクエストに応じるような人を神としてはいけない。それでは自動販売機と同じ扱いになる」などと偉そうなことをいって慰めました(笑)。しばらく京都、関西方面でライブはないかも知れませんが、この半年ほどの4回のライブで、取り敢えず「満腹」です、僕は。ありがとうございました。