美徳の不幸 part 2

Pity is akin to love.

鈴木祥子@玉川上水ロバハウス「A Fantasy of "Epic" Days」

数ヶ月の間を置いて、再び鈴木祥子さんのライブに行って参りました。今回の会場は、玉川上水の「ロバハウス」というところ。元々古楽器の演奏をしているところらしく、面白い作り。内部は洞窟とかそういうモチーフで、壁一面の楽器も興味深かったです。会場は約80名ほどでぎゅうぎゅう詰め。今回のライブのタイトルは「A Fantasy of "Epic" Days」というもので、祥子さんのEpic Sony所属時代を振り返るという趣向(その第2回目)。つまり、初期の曲が中心であり、それを恐らく30余年間聴いている僕を含めたリスナーが集う、という濃い空間。

ロバハウス外観

準備されている楽器はアップライトのピアノと、祥子さんのウーリッツァー(電子オルガン)のみ。今回は完全unplugged、つまり生声&生音。まあまあ狭い会場とは言え、これには驚きました。前回が、完全なスタジオライブでしたから、ある意味真逆。
祥子さんは白いブラウスとグレーのスカートという出で立ちでご登場。前口上で「今日はEpic時代の曲をやっていくわけですが、あの頃は自分の声量などを考えずに作ったものですから、(マイクなしで)最後まで保つかどうか(笑)」とおっしゃいましたが、結論から申し上げますと、保ちました。改めて、単純にヴォーカリストとしてすごいなあ、と思いました。以下、セットリストを書いていきますが、曲の後ろの(P)はピアノ、(W)はウーリッツァーを指します。

壁に掛かっている古楽器

1)ぼくたちの旅(アカペラ・手拍子→P)(Candy Apple Red)
「一曲目に、Epic時代の最後の曲を保ってきてしまいました(笑)」
2)Swallow(W)(水の冠)
「これは4月の曲ですね。この曲は、リクエストもよくいただき、ついまたこれかあ、とかと思っちゃうんですけど、今日は、昨日この曲を書いたつもりで歌います(笑)」と歌ってくれたのですが、ウーリッツァーが「ご機嫌斜め」で、どうも基盤などが浮いているのか、音が割れたり、まるで近くにスネアドラムを置いているような振動音がしたので、「やりなおし」ということで
3)Swallow (take 2)(P)
が改めて演じられました。その間に、ウーリッツァーは上部にタオルと板を置いて、それごとガムテープで固定されるなどの「応急処置」を経て、以降は大丈夫な状態になりました。京都の「拾得」でのライブの時は、店にある「漬物石(名物の「漬物ピラフ」の漬物は実際に作られていたのでしょうか)」を載せていたこともありましたが、今後「漬物石」に代わる何かが望まれるところです。
4)青い空の音符(P)(Long Long Way Home)
ライブで聴くのは珍しい曲かも。作詞は大貫妙子さん。この曲が特にそうでしたが、今回祥子さんは過去の自作を歌うに際して、イントロを結構アレンジしていて、一瞬「これ、何の曲だ?」と戸惑うことも多かったです。
5)苦しい恋(P)(Candy Apple Red)
しっとり目の前曲から一転して、この激し目の曲。祥子さん自身も途中で演奏を止めて「さっきの曲(青い空の音符)とこの曲、年数にして7年くらいの間があるんですが、今歌い始めて、この人どうしちゃったの、というくらいの変わりようですよね(会場爆笑)」確かに。
6)あの空に帰ろう(W)(Long Long Way Home)
この曲は戸沢暢美(まさみ)さんの作詞。「戸沢さんが既に亡くなっていることを数年前に知って、すごくショックで・・・。実は同じアルバムの「水の中の月」という曲も、最初は戸沢さんの書いてくれた歌詞があったんですが、あまりにもダークな内容で、これはちょっと歌えない、ということで自分で歌詞を書いて歌った、ということもありました」という裏話も。祥子さんの「水の中の月」の歌詞も相当暗めですが、それよりって、どんだけ・・・遠くのファンは思ったことでしょう。
7)サヨナラの朗読 English ver. & Japanese ver.(W)(Viridian)
「これ、デビューアルバムの曲なんですが、その時は結構一生懸命多重録音でデモテープも作っていて、この曲は最初英語の歌詞を付けて歌っていたんですよね」と言って、その「デモテープヴァージョン」が1番だけ歌われ、その後は本来の「日本語ヴァージョン」へ以降。
8)Sweet Basil(W)(水の冠)
さりげなく不倫を歌っているこの曲、個人的には結構好きです。
9)危ない橋(W→P)(風の扉)
ウーリッツァーからピアノに移行しつつ。
10)Hourglass(P)(Hourglass)
この曲は作詞が杉林恭雄さん。アルバムのタイトル曲。すごくない政敵、と称されたこのアルバム、発売当初なぜか繰り返し聞いていたのを思い出します。既に亡くなった大学院の友人K沢君も、確かこのアルバムを褒めていたなあ。
11)チャイム(W)(Radiogenic)
「この曲は作ったときはアップテンポだったのが、結局落ち着いた(neatな)感じになって収められた」と祥子さん。客も少し、怖々とコーラス。何せ「生声」ですので、祥子さんの声をかき消しては、と皆さん配慮していた感じでしたね。
12)Happiness(P)(Hourglass)
「さて、しばらく封印していた曲を(笑)」と祥子さんが言うと、客も「ああ、もしかして」と阿吽の呼吸(笑)。「歌うと不幸になる(笑)、といわれていたこの曲、25歳、という言葉を入れるなとプロデューサーに言われケンカになったりしましたが、私はジャニス・ジョップリンの「Kozmic Blues」にインスパイアされたというか、自分の中の炎が、という感じで(作った)」「今回のライブ、Fantasyと名付けましたが、私がデビューしてからEpicを離れるまでの12年ほどですか、23歳から30代前半という、女性の人生で重要な期間というか、高低差もすごくあって、最早あの時間は昔すぎて私にはファンタジーなんですよね。でも、歌い直すと新たな発見があるし、こうして皆さんとつながれるというのはありがたい(大意)」と前口上があり、そこからジャニスが完全に乗り移った祥子さんのemotionalな曲の「入り」があり、今回は原曲通り「25歳」と歌われました。その後は
13)ときめきは涙に負けない(P)(Radiogenic)
14)波の化石(ファシル)(P)(Viridian)
「実は「Happiness」「ときめきは~」「波の~」はすべてFのキーなんです」と言い、そのままシームレスに
15)海辺とラジオ(P)(Snapshots)
で盛り上がり、この曲を終えホッと一息。ここで祥子さんが「何かリクエスト、あります?」と聞いて、以下の2曲が採用されました
16)My love, my love(W)(Radiogenic)request
17)あなたを知っているから(W)(Haevest)request
18)Good Old Dusty Road(W)(Snapshots)
祥子さんはトイトランペットを持参して、プップク吹いておりました。本編はここまで。以下はアンコールです。
e1)愛はいつも(W)(風の扉)
祥子さんは「Romances sans Paroles」のTシャツとジーンズにお着替え。この曲からシームレスに
e2)Farewell Song(P)
が歌われ、「もう何も辛いことはない」と今回のライブは締めくくられました。僕たちファンとしては「もう何も言うことはない」状態でした(笑)。お腹いっぱいです。
ここまでほぼ休憩なしで2時間強、歌いきってくださいました。そして会場先行発売のライブアルバム『歌う、聴こえる~そして10のメモワール Chanter, entendre et 10 memoires』を当然のように買う我々。帰宅して聴いたら、これまたいい音!実はこのブログもこのCDを流しっぱなしで書きました。

ピアノとウーリッツァー

祥子さんによると、エピック時代を振り返るライブ第3弾は6月以降に企画しているそう。刮目して待ちたいと思っています。

なお、ライブの後は大体ファン仲間と軽く打ち上げをするのですが、新宿に戻ったのに、まさかの「居酒屋難民」となり、打ち上げられなかったことだけが残念でした。完全に新宿、コロナ前の人出に戻っていますね・・・。