美徳の不幸 part 2

Pity is akin to love.

社会学とは別の仕方で

岸政彦さんの『断片的なものの社会学』(朝日出版社、2015)を読んでいる(もうすぐ読み終わる)。ウェブ連載中から大体読んでいたが、改めて読むと、まさに「短編小説集」を読んでいるような気持ちになってきた。
この本は岸さん自らが言うように「無意味で」「断片的で」「社会学の分析対象にもならない」が、しかし確かにこの世に存在し、この世界を構成しているものを取り上げている。
いくつかの「断片」を読み進めるうちに、僕の脳裏には、ふと片岡義男の短編の「作法」が思い浮かんだ。片岡の短編には、淡々とした描写を続けて最終的に「これを小説にすればいいのだと僕は思った」という締めで終わる「メタ小説」が結構多いのだが、最初僕は岸さんの本も、片岡義男的視点で、各章の終わりに「僕はこの話を小説にすればいいのでは、と岸さんに言いたくなった」と独白しながら読もうとしたのだが、これがどうも上手くいかない。それは、各章が「すでに完成した短編小説」そのものだったから。少なくとも僕にはそう読めた。
何かねじくれた感想文になりましたが、以上です。

断片的なものの社会学

断片的なものの社会学