思想史的にオウムを読み解くと・・・
今日は年度最後の某会議があり、その後研究室で、最近出た後輩大田君の本を一気読み。
- 作者: 大田俊寛
- 出版社/メーカー: 春秋社
- 発売日: 2011/03/01
- メディア: 単行本
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感想を一言で言うと、「宗教学(説史)概論」「近代宗教史概論」として、上記の三つの「主義」を整理する手腕は見事なもの(逆に言えば、非常に「玄人向け」。文章は読みやすいけど)と感じたが、冒頭に掲げられた「何故オウムだったのか」という所にはなかなか辿り着くのが難しい、という隔靴掻痒感があったのも事実(無い物ねだりは承知の上。大体、書評なんて無い物ねだりが大半)。つまり、最後のあたりで大田君も多少述べてはいるが、オウム以外に当てはまる普遍的なことを論証してしまったせいで、却って「何故オウムだったのか」というユニークネス(僕などは、どうしても俗っぽい人間なのでオウムがこだわったヨーガなどの身体性をそのユニークネスの根幹に置きたくなるのだけど)の論証が後景に退いてしまった感じがしたのだ。
ただ、オウム真理教の突飛な教説が突然現れたものではなく、それなりの歴史的文脈から出てきて、それ故に広範な支持を得られたのだ、という記述は説得的。でもこれは、「ナチスがどうして受け入れられたのか」という問題と同型で、どうしても論点先取りになってしまいがち(歴史学的後知恵は往々にしてこういう事態になるから、この本の瑕疵ではないけど)。
もう一つ個人的な思い出話を書くと、駒場裏のアジトで、井上嘉浩氏(当時は「アーナンダ」と名乗っていて、本名を知ったのは逮捕後)からオウム本(研究室にあるのは、ほとんどそのときもらったもの)をもらってからもう18年経つのか・・・(宗教学科同期のK島とM嶋の3人で遊びに行ったんだよね。今思えば冷や冷やものだが)。そして、手元にある『ヴァジラヤーナ教学システム教本(いわゆる「ポア」の思想をガンガン言っている麻原の説教集)』は、オウムにはまっちゃった研究者のSさん経由で入手したんだよな・・・。
追記:電車の中でつらつら思っていたんだけど、オウムのヨーガによる意識変革とか、そういう肉体への眼差しとかこだわりというのも、広い文脈では、「人間性の回復」「自然への回帰」というようなロマン主義的文脈に位置づけられるかもしれませんね。ナチスドイツにしたって、いわゆるドイツ民族高揚のための民俗学的な思潮とか、ワンダーフォーゲル運動とか、有機農業とかあったりしたし。藤原辰史さんの本も大分前に購入しているけど、積ん読だわ。
ナチス・ドイツの有機農業―「自然との共生」が生んだ「民族の絶滅」 (KASHIWA学術ライブラリー)
- 作者: 藤原辰史
- 出版社/メーカー: 柏書房
- 発売日: 2005/02/01
- メディア: 単行本
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