美徳の不幸 part 2

Pity is akin to love.

「成長物語」と精神分析

今日は新幹線の中で、以下のブックレットを読了。

『秘密の花園』ノート (岩波ブックレット)

『秘密の花園』ノート (岩波ブックレット)

作者は、最近作品が映画化されたりもしている梨木香歩さん。僕は実はまだ梨木さんの作品を一つも読んだことがないのだけど、妻がファンで、彼女から勧められて読む。バーネットの原作は、もしかしたら大昔読んだかも知れないが、すっかり記憶の彼方。さすがに、何度も映像化されている『小公女』『小公子』のストーリーは憶えているが。
梨木さんの指摘にもあったが、この2作品と『秘密の花園』の最大の違いは、主人公が「できた子ども」かそうではないか、ということ。要するに、『花園』の主人公たるメアリは、インドでお嬢様としてインド人の召使いにかしずかれてはいたが、両親の愛情に恵まれず、癇癪持ちの鼻持ちならない、「可愛げのない子ども」として描写されている。セイラやセドリックとはえらく違うわけだが、却ってメアリの「成長」が描かれることになる。それをこのブックレットは丁寧に追っていっているのだが、読んでいて、何となくユンギアン、というと言い過ぎかも知れないが、精神分析というか、発達心理学の文章を読んでいる気持ちになった。でもこれは、精神分析は神話などまさに「物語」を分析する「知」として登場したのだから、ある意味当然と言えるかも知れない。