美徳の不幸 part 2

Pity is akin to love.

読了本

昨日読み終えたのはこの2冊。

昭和天皇 (岩波新書)

昭和天皇 (岩波新書)

何だかんだで、原武史先生の本は全部買っているんだよなあ。今回の作品は、先日読んだ松本健一氏の『畏るべき昭和天皇』とは対照的な筆致。要するに昭和天皇に点が辛いのだ(えー、そうかなあ、と思うような箇所も多いが)。読み物としては、松本氏の方が昭和天皇を「魅力的」に描いているので面白いのだが(例えば、「(天皇の戦争責任ということについて)そういう文学的方面については・・・」というおとぼけ発言を「高度な政治的判断によるはぐらかし」と見るかそうではないと受け取るかで評価は180度違ってくるしね)、原氏の言うような点も考慮に入れねばなるまい。
あと、「宮中祭祀」という、神道学者も触れたがらない点に切り込んだのはさすが。国家神道論でも扱いづらい素材で、まだちゃんと宮中祭祀皇室神道)まで包括した「国家神道論」って、管見の限りほとんどない(村上重良先生の研究があるが、ちと問題も多い)。
原さんの本はいつも、「そんなの知らなかった」という情報を教えてくれるので好きなのだが、今回知らなかったのは、大正天皇の皇后、すなわち昭和天皇の母親の貞明皇后が、筧克彦の「神ながらの道」の信奉者で、ちょっと神がかった人だったらしい(そして昭和天皇も大分影響を受けているらしい)、ということ。
らも―中島らもとの三十五年

らも―中島らもとの三十五年

これは夜中に読み出して止まらなくなった。中島らも奥さんの壮絶な自伝且つ、らもの伝記。思わず酒が飲みたくなる内容。「中島らも」という固有名を消すと、一体どこのコミューン(カリフォルニアの砂漠の真ん中あたりの)の記録だよ、とまで言いたくなる代物。僕が初めて「中島らも」という名前を知ったのは、ご多分に漏れず『宝島』の「啓蒙かまぼこ新聞」。動く彼を初めて見たのはよみうりテレビの伝説のカルト番組「なげやり倶楽部」だったが、あの時、家庭ではこんなことが・・・と思うと気が遠くなる。
僕がこの本を読んでいて思いだしたのは、作家の高橋たか子さん。彼女は夫の高橋和巳を早くに癌でなくしたが、その「看病日記」がすごいのだ。
高橋和巳の思い出

高橋和巳の思い出

要するに、上記の二人に共通しているのは「天才の夫の真価を理解し、支えてあげられるのは私だけ」という愛情とプライドと自意識がない交ぜになった感情だ。