美徳の不幸 part 2

Pity is akin to love.

「民主主義」的だから、支持される

このところ本を読む集中力がなく(いつものことだが)、カフェや喫茶店に行って、無理矢理「目の前のこの本しか読むものがない」という状況に持ち込んでお勉強することが多い。今日もそうで、夕食の後、最近よく通っている西大路御池の「Globe Mountain Coffee」という店に出向き、おかわりまでしつつ長居。読み終えたのこは、大学院ゼミで読む予定のこの本。

国民の天皇 戦後日本の民主主義と天皇制

国民の天皇 戦後日本の民主主義と天皇制

結構長かったが、読みやすかった。結論は、乱暴に言ってしまうと、現在の天皇制(特に昭和から平成に代替わりしてその傾向が顕著になるが)は、右派が「堕落した」とか嘆くのとは裏腹に、「堕落した=民主主義化した」がゆえに、広範な国民の支持を得て、現在まで連綿と続いているのだ(「国民の天皇」となった)、ということ。このような「大衆天皇制」は、一昔前に政治学松下圭一が説いたことの正しさを証明している、というわけだ。勿論この「民主主義化した」というのはあくまで比較の問題なわけだが。
戦後政治の歴史と思想 (ちくま学芸文庫)

戦後政治の歴史と思想 (ちくま学芸文庫)

この自選論集に所収。この結論は、以前読んだ石田あゆうさんの『ミッチー・ブーム (文春新書)』でも説かれていたような記憶がある。要するに、右派とは到底言えない国民の天皇制支持の理由は、この逆説にあるとしか言えないんだろうな。
なお、若き中曽根康弘が「明治の天皇主権体制は日本の歴史では一種の逸脱(まあ、これも一種の「天皇無謬説」を裏付けたい欲望から来る「神話」の一種なのだが)」「女性天皇もあり」とか、なかなかの「先見の明」を示していることもこの本は教えてくれた。食えない人だが、最近の連中よりさすがに頭は良いよな。