美徳の不幸 part 2

Pity is akin to love.

差別の「起源」

今日の院ゼミでは、以下の本のから数本論文を読んで討論。今日は特別に、中世史のK本君も参加してくれる。

日本歴史の中の被差別民 (新人物文庫)

日本歴史の中の被差別民 (新人物文庫)

この本の網野善彦、朝尾直弘という二人の巨人の論文を読んだのだが、今日の発表者であるW邊君は補助資料としてごつい事典の「部落の起源」という項目をコピーしてくれた。
部落問題・人権事典

部落問題・人権事典

その項目によると、以前は近世の厳しい身分秩序が形成されたときに部落差別は設定されたとする「近世政治起源説」が有力だったが、最近は中世に既に被差別民がいたことを重視し、そこからの連続と断絶を腑分けしていこう、というのが研究の主流となっているらしい。
政治制度としての研究はそれで良いだろうが、それを支える観念として、やはり「ケガレ」思想は考えざるを得ない。結論の出ない問題なんだけどね。K本君が、自分のふるさとの奈良の話を持ち出し、そこからついつい「両墓制」の話などに議論はスライド。彼も以下の本を読んで勉強したそうだ。偉い。僕は買っただけ。新谷先生、ごめんなさい。
両墓制と他界観 (日本歴史民俗叢書)

両墓制と他界観 (日本歴史民俗叢書)

議論の中で、いわゆる被差別部落が多いとされたのは「西国」で、両墓制が拡がっているもの「西国」。この辺りに解く鍵があるんじゃなかろうか、などと一知半解なことをつい口走ってしまう僕。