美徳の不幸 part 2

Pity is akin to love.

加害と被害のあいだ

先ほど、風呂の中で読了(半身浴、というか足湯で読書して、汗を流している)。

民族とネイション―ナショナリズムという難問 (岩波新書)

民族とネイション―ナショナリズムという難問 (岩波新書)

タイトル通り、ナショナリズム問題の入門書。巻末の参考文献も充実しており(日本語限定、というのが却ってありがたい)、助かる。塩川先生が後書きで自らおっしゃっているように、先生のような旧ソ連・ロシアをフィールドにしている人が、そこの数々の事例を列挙していき論証しようというのは、意外と今まで少なかったので、その意味でも有用だろう(実際、他地域の記述よりも、力が入っている気がした)。例えば、僕などはアルメニアアゼルバイジャン紛争について全く知らず、欧米の綺羅星のような知識人たち(デリダレヴィナスバーリン、ハーバマス、ローティたちが関わったそうな。錚々たりすぎ)の共同声明が、その意図にも関わらず、アゼルバイジャンを一方的に「悪玉」にしちゃって、却って紛争の激化に貢献してしまったことなど知らなかったし(p.203)。
そもそもナショナリズムは、ある時は「被害者」として、ある時は「加害者」として立ち現れるものなので、「いい・悪い」とか簡単に言えない代物なんだよね。先生の記述も、その意味で大変誠実な「歯切れの悪さ」を見せていたと思う(って偉そうだな)。