美徳の不幸 part 2

Pity is akin to love.

被害者から加害者へ

というわけで、現在話題になっているこの本を読了。

高学歴ワーキングプア  「フリーター生産工場」としての大学院 (光文社新書)

高学歴ワーキングプア 「フリーター生産工場」としての大学院 (光文社新書)

いやあ、大学院の状況はその通りとしか言いようがない。ただ、全てを文科省と東大法学部の陰謀にするのは無茶。ただ、大学院重点化(部局化)の先鞭を付けたのが東大法学部というだけであって、このあおりは無用な誤解を招いてこの書の価値を減じている。
ついでに思い出話を言うと、東大法学研究科(研究者養成コース)は、僕が知っている限り例外的にアカデミックな就職に困らない大学院。20代の後半で地方大の准教授なんて言うのはざら(というか、それが普通)。僕はM1の時、法学研究科の政治思想史のゼミに出ていたが、確かに少数精鋭の皆さんが揃っていて(苅部直先生や原武史先生、平野聡さんや犬塚元さんとご一緒だった)、文学部唯一の参加者だった僕はビビリまくり。まあ、皆さん、大企業への就職や官僚、法曹界への道を捨てて研究の道に入る変わり者だから、メチャクチャ勉強が好きで優秀なのが揃っていたのは確か(人間性までは知らぬが)。僕はこのゼミでの発表のあと皆さんから「文学部の割にはよく勉強しているねえ」と言われて死亡した。閑話休題
話を戻すと、今や、一部の大学院を除いて、明るい材料などありはしない。そもそも、僕の出身研究室だって、昔からだがお寒い状況だ。僕などは例外的な運の良さだ。
で、僕がこの本を読んでやりきれないのは、既にアカポスを得ている僕は、もはや「加害者」の列に並んでいるからだ。だから僕はこの書の前で、これ以上は論評できない。失語症になるほかない。