美徳の不幸 part 2

Pity is akin to love.

師弟関係

大学院に残って研究者を目指すと、前近代的とか何とかいわれようが、ある種の師弟関係が発生するのは避けられない(僕は幸いに師弟関係に関しては恵まれた環境で育った。僕を先生としてしまった学生が幸せかどうかは知らない。せめて「不幸ではなかった」と思ってくれればいいが・・・)。
ということで、この本も購入。

先生とわたし

先生とわたし

シンプルなタイトル、というより思わず本屋で「『王様と私』か!」と突っ込んでしまったが、由良君美の伝記としても面白そう(何たって直接の弟子の筆だから、ちょっと割り引いて読まねばならぬだろうが)。
小林龍生氏のブログのエントリも参考に。

追記:面白くて一気読み。ここまで強烈な師弟関係は経験しなかったし(これからどうなるかは判らないが)、やはり四方田先生という「選ばれし弟子」の特権的な、そして栄光を背負った回顧談だとは言えるだろう。まあ、これほど優れた師匠とバトルをしちゃいましたと回顧できるだけでも、十分「幸福な体験」である。
もう一つ付け加えると、別に「万人が認める偉人」であることが師匠である必要条件ではない。逆に「この人の真価を理解できるのは僕だけだ」という倒錯した憧憬と密かな自尊心を抱くことができる相手なら、世間がなんといおうと師たりえる(下手すると共依存だが)。

また何よりも、学界ゴシップの一種として楽しめてしまうのも事実(出てくる固有名詞の何人かは、実際に知っている方々だし)。
でも一番驚いたのは、中国文学の藤井省三先生や八幡書店武田崇元氏も由良ゼミ出身だったってことだ。研究室に置いてあった由良君美編の本と、由良ゼミになじめなかった船曳先生の回顧録まで引きずり出しちゃったぜ。

世界のオカルト文学 幻想文学・総解説―決定版

世界のオカルト文学 幻想文学・総解説―決定版

これ、いつ買ったんだろう。多分大学生の時に古本屋で買ったか、兄貴が買ったのをもらったかどちらかだと思うが記憶にない。僕自身は幻想文学にはほとんどなじめなかったけど(どっちかというと、例えばトマス・ハーディとか自然主義的な悲惨な物語ばかり大学時代は好んで読んでいた気がする)。例えばバルザックの『セラフィタ』という小説を買ってすぐ挫折した記憶あり(これはzabadakに同名の曲があったので買ったのだが)。
大学のエスノグラフィティ

大学のエスノグラフィティ

僕自身は、船曳先生の一般教養の「人類学」で感動しちゃった経験があるので、もしかしたら彼のスタイルを形成したネガティヴな一要素として「由良ゼミ」があったと思うと(船曳先生は学生にお守りをさせるような共依存的な関係を嫌っていた)、感慨深いというか何というか。