美徳の不幸 part 2

Pity is akin to love.

小川洋子の静謐な「共同体」

いま、映画化もあって文庫化されたこの本を読んでいます。実は、僕は昔けっこう小川洋子さんの熱心な読者だったんですが(『妊娠カレンダー』のサイン本を買ったほどです。あれは神田の三省堂だったな)、その「甘い」世界から距離をおくべく、この10年は読んでいませんでした。

博士の愛した数式 (新潮文庫)

博士の愛した数式 (新潮文庫)

で、久々に読んだ小川洋子ですが、くそう、泣かせるなあ。
何か、まだ半分までしか読んでいないんですが、その後、この甘やかで静謐な「共同体」が終わることをこっちが先取りして、思わず涙ぐみそうです。
小川洋子の世界って、いつも何らかの濃密で内閉的な(でも居心地は良い)共同体が崩れた後、「私」がそれを振り返る、というモチーフが多いと思うんですが、その世界の美しさに一時期僕は酔いしれて、これじゃいかんと思って離れていたわけです。
考えてみればベタだと思うんですが、うまいです。降参。