美徳の不幸 part 2

Pity is akin to love.

亜洲奈みづほ『「アジアン」の世紀』(中公新書ラクレ)

大学院の演習でのイントロダクションとして選択し、今日読了。
うーん、評価に困る本だね、これは。個々の具体例は面白いのに、全体的な話になると、途端に精彩を欠く、という印象。
日本人のアジア文化「消費」のポリティックスにどうしてもすぐ目のいっちゃう(要するに、過剰に「カル・スタ」的な)僕のような人間にとって、著者の考えは、そのポジティヴさを買うとしても、やはり詰めが甘すぎる気がしてならない。岡倉天心や、竹内好の引用も、ちょっと強引。
著者が、例えば台湾や韓国で、おばさんに足もみさせたり垢すりさせることに、一抹の罪悪感を感じるセンシティヴな人だからこそ、乱暴な政治状況の診断部分(例えばナショナリズムパトリオティズムに対する診断。5章あたり)が残念。
でも、「韓流」が日本・台湾で広まったように、文化の相互浸透は、その浸透圧を変化させつつも、決してとぎれはしないだろうな。ちなみに写真は、2001年に台湾にプロモーションに行かれたイ・ヨンエ(李英愛)様です。僕が崇拝してやまない韓国の女優さんですが、台湾でも人気があるそうです。こういう形で、日本を抜きにして(当たり前だが、日本人はどうもアジア主義的なことを言っても日本中心主義からなかなか逃れられない)、こういう交流もある、ということで。