美徳の不幸 part 2

Pity is akin to love.

例の腐女子本

例の杉浦さんが新書を出していたのは知っていたが、今回はスルーしようかな、と思ったら既に妻が購入して読み終えていたのでそのまま借りて、新幹線の中で読了。

感想は・・・、というと前作の『オタク女子研究 腐女子思想大系』と似た感じになるのだが、やはりこの人はよくも悪くも熟練のライターなので、「オチ」を付けるのがうまいというか、「三題噺」を作るのがうまいというか、どうもそういう印象を持ってしまう。「二、三の例だけで強引な一般化」とか、そういう批評は、週刊誌記事に対してならどうにだって付けられる批判なので、それはともかくとして、前半は前作と似たテイストで腐女子の紹介、後半は酒井順子三浦展に触発された形での「格差社会論」になっている。どう腐女子と折り合いを付けるのかな、と思ったら、日常の過酷な場からの休息の場として「嗜好で繋がったコミュニティ」を拡げていく「腐女子化」こそが大事だといったり(p.164)、他にも「女性のオタクたちの「腐っているし」というのは、この女性誌が煽ってきた「競争」から降りることである(p.186)」とか「健全な現実逃避(p.200)」とか、やはり腐女子的なライフスタイルの称揚で締めているのだが、思わず「う〜ん(そうかな)」と腕を組んでしまう。宮台さんの「まったり革命」や、本田透さんの『電波男』と同じように、実はその「ライフスタイル」は選んだものなのか、選ばされたものかよく判らないし(要は「過剰適応」の問題なんだけど)、あとで宮台さんが自説を撤回したように、実は軽やかに見える彼女たち(宮台さんならコギャル、杉浦さんなら腐女子)の生き方が実は奥底にどろどろしたものを抱えていることだって、十分に予想がつく。
でも、ところどころに鋭い視点もあり(参考文献一覧が貧弱なので、どこまでが彼女の意見かよく判らないのだが)、読んで損をした金返せ、とは思いませんでした。でも、満足はできなかったな、さすがに。