美徳の不幸 part 2

Pity is akin to love.

入門書じゃない

電車の中と研究室で読了。

社会学入門―人間と社会の未来 (岩波新書)

社会学入門―人間と社会の未来 (岩波新書)

この本、社会学を全く知らない初学者が読んではダメです。はっきり言うと、中上級者向きだと思う。具体的に言うと、例えば「短歌」や「流行歌」、「旅行体験」から社会のあり方の推移を読み解くなんていうのは、見田先生ほどの方の「名人芸」であって、素人が真似してはダメです(笑)。
さて、僕は十数年前、大学一年生の時、見田先生の「社会学」を履修していたが、その時の先生の講義は、人数の多いマスプロであったこともあって、熱心に出席したとは言えない。あと、正直言って見田先生の話が「判りづらい」というのも理由だった。これは僕の方に「社会学とは、理論でもって世の中の事象をサクサクぶった切っていくものだ」という「思いこみ」(そう、まさに思いこみだ)があって、そのような使い勝手のよい道具としての理論の説明よりは、具体的な事例を挙げて考えさせる見田先生のスタイルが、未熟な僕にはよく理解できなかったのだ(本書の中では、第2章の内容を記憶している。その時買った柳田国男の『明治大正史 世相篇 新装版 (講談社学術文庫)』はまだ僕の書架にある)。
でも、その後多少勉強した甲斐があってか、今なら見田先生が僕たちに何を伝えたかったのかが、おぼろげに判ったような気がした。この本は、僕のような人間にとっては、当時の見田先生の「肉声」を思い出させるよすがとなった。