美徳の不幸 part 2

Pity is akin to love.

鈴木祥子@Theatre Alterio「Syoko With Klavier vol.1」


さて、僕が既に四半世紀ほどファンを続けているシンガーソングライターの鈴木祥子さんですが、最近は様々な鍵盤楽器を用いて、その味わいの違いなどを僕たちに教えてくれることが多いのですが(以前の「松本記念音楽迎賓館」でのライブもそうでしたね)、今回は新百合ヶ丘にある「川崎市アートセンター」内のアルテリオ小劇場で、ピアノ(P)、チェンバロ(Ce)、クラヴィネット(Cn)という三種類の鍵盤楽器を並列させて、それを渡り歩きつつ演奏をするという試みでした(それぞれの楽器は写真を参照)。
僕は新百合ヶ丘で降りたのは初めてだったのですが、新宿から小田急快速急行に乗ると、下北沢の次なので驚きました。成城学園駅が飛ばされるなんて・・・。僕は余裕を持って到着したつもりだったのですが、既に会場では長蛇の列(当然顔見知りも多数)。それでも前から2列目の席をゲットして待機していると、よくある「開演前の諸注意」のアナウンスが流れたのですが、これが祥子さんご自身によるもので、心の中で「まるで声優の田村ゆかりさんみたいなファンサーヴィスをしてくださるなあ」とガッツポーズ。少しだけ噛んだのはご愛敬。


ほぼ時間通りに祥子さんが、肩を出した白黒チェックのワンピースで登場。まずは左に置かれたアップライトピアノに着席。何とこのピアノ、祥子さんの自宅から持ってきた文字通りの「相棒」なのだそうです(僕は無知なので、この「Schwester」というメーカーを初めて知りました)。これからは僕の分かる範囲で、この日のセットリストを書いていきたいと思います(不明なところもあるので、情報をくださればありがたいです)。
1)遠く去るもの(ファーラウェイ・ソング) (P)
一曲目は、この度発売された「鈴木祥子最新録音集」に収録された新曲。僕は「予習」をせず、この会場で買ったもので、ちょっぴりその点は後悔。恐らくもうすぐ出るであろう(来年30周年記念で出したいと祥子さんもおっしゃっていました)ニューアルバムにも収録されると思います。
2)(Don't wanna be)SAVED. (P)
これは坂本真綾さんに提供した「SAVED.(アニメ「いなり、こんこん、恋いろは。」エンディングテーマ)」のセルフアンサーソングとでも言えば良いのでしょうか。でも坂本さんに提供したものとは違って、ざっくり、さっぱりした感じの内容の曲ですね。
3)契約(スペルバインド) (Ce)
この曲には確かにチェンバロが合いますね(チェンバロはペダルがなく、強弱がつけられない楽器なので、やはり曲を選ぶとは思います)。
4)サヨナラの朗読 (Ce)
おお、これは超懐かしい&レア!なんたってデビューアルバム「Viridian」に収録の曲。

5)Father Figure (Cn)
そして名曲のこれですが、祥子さん曰く「実は、この曲にこのクラヴィネットを使っています。後で確認してください」とのことですので確認したら、使われていましたね。電子キーボード、ウーリッツァーだけじゃなかったんだ・・・。ちなみに、祥子さんのお使いのこの楽器「Hohner Clavinet D-6」というもののようです。このサイトを参考にしました。これはアルバム『Sweet Serenity』に収録されている曲ですが、祥子さん曰く「最新アルバムが10年前、っていうのは面白い(笑)。」とりあえず、次のものを鶴首してお待ちしましょう。
6)I say a little prayer (P)
以前祥子さんが出した『Shoko Suzuki sings Bacharach & David』というミニアルバムにも収録されている名曲。僕も大好き。歌詞も可愛すぎるし(「目が覚めた時(wake up)、そしてお化粧する時(make up)、あなたのためにちょっとお祈りするわ」というのが冒頭ですね)。祥子さんの解説によると「バカラックサウンドって、すごく洒脱というか、おしゃれなんですが、よく聞くと、ラテンのリズムがその基調にありますね」と言って、わざわざ持ってきたパーカッションの「クラベス(だと思うのですが。要するにラテンの拍子木)」「ギロ(溝を棒でこするやつですね。祥子さんはこの日、割り箸でこすっていましたが)」でリズムを取って音楽講義。その流れで次の曲は
7)Close to you (P)(さわりだけ)
でした。これもバート・バカラックとハル・デヴィッドのコンビの名曲ですよね。Carpentersが歌って大ヒットとなりましたが、そのCarpentersがカヴァーしていたBeatlesの曲として
8)Ticket to ride(涙の乗車券) (P)
が歌われました。祥子さん曰く「無色透明な Carpenters ヴァージョンで」とのこと。
9)Different Drum (Ce)
これはLinda Ronstadtがソロの前に所属していたバンド「The Stone Poneis」での曲。祥子さんによると「あなたと私は違うドラム(リズム)を叩いて旅していたんだもん」と別れを切り出すドライな内容、だそうです。


10)クラシックメドレー (Ce)
ここからは数曲、チェンバロによるクラシックメドレー。モーツァルトの「ピアノソナタ11番(元々これは「クラヴィアソナタ Klavier sonata A-Dur K.331」が原題だったそう)」「トルコ行進曲」そしてショパンの「英雄ポロネーズ」だったかな?ここでも祥子さんの鍵盤楽器の変遷についての講義があり「トルコ行進曲は恐らく、その時出てきたフォルテピアノ(モダンピアノの前駆形態)のために書かれた(オクターブが支配的になっていく)」とのことでした。
11)北鎌倉駅 (P)
これも最新CDに収録されている曲。「北鎌倉」を題材にした曲だと、浜田省吾の「紫陽花のうた」もありますね。
12)Sweet Drops (Ce)→洋楽元ネタ織り込みメドレー (P)
これはアニメ「うさぎドロップ」の主題歌として書かれた曲で、Puffyに提供されたもの。最新CDに「ボツヴァージョン」が収録されています。ボツになった理由が「ビートルズのパロディっぽすぎる」との理由だったとのこと。祥子さんは「私の好きな音楽のオマージュで作った曲ですが、私としてはビートルズよりも、彼らが好きだったThe Cricketsまでさかのぼったつもりだったのに」とのこと。確かに「I Fought The Law」ですね。

ここで繰り広げられたメドレーはオフィシャルブログによれば、「Sweet Drops(Cembalo) 〜Love will keep us together(Cembalo)〜Cum on feel the noize(Piano,Cembalo,Piano)〜Saturday night(Piano)〜Sweet Drops(Piano) 〜I fought the law(Piano,A cappella)」とのことです。
13)星のまたたき (P)
これは新曲。初めて聞く曲。前奏及びサビの転調が泣かせの転調でした。祥子さんは「“シャボン玉ホリデー”を意識した」と言っていましたが、この話題についてこれる人間はどれくらいいたでしょうか(笑)。僕はこの曲を聴いた時、30年ほど前の大貫妙子さんのいくつかの曲が浮かびました(坂本龍一さんがアレンジをしていた時代)。本編はここまでで、以下はアンコールですが、アンコールが充実しておりました。
e1)モノクロームの夏 (Ce→Cn)
これは会場からのリクエスト。リクエストしたのは僕の知り合い。
e2)夏のまぼろし (Cn→アカペラ)
これもリクエスト。最初クラヴィネットで弾いていたのですがある部分を間違えたあと、いきなりクラヴィネットからアカペラに変更。にしても、リクエストに即座に応える祥子さんの「音楽的運動神経」の鋭さには毎回脱帽です。
e3)Do you still remember me? (P)
「この曲は、私が音楽をやめようと思っていた時に作った曲」という不穏な発言もありましたが(笑)、やめないでくださってありがとう以外の言葉がないです。
e4)旅立つことを決めれば (P)
これも前のライブでやったことはありますが、CD未収録の新曲ですね。
e5)逆プロポーズ(仮。) (P→Ce→Cn→Ce→P)

実は、この曲、僕の知り合いのRさんがアンコールの最初にリクエストしたのですが、「あ、それ、予定に組み込まれている」と一端却下されたのですが、最後の最後で演奏されて、Rさんも満足だったことでしょう。
これにて本編は終了。ライブが終わった後のアナウンスも、ノリノリの祥子さんが「Thank you for coming」云々と言って、客席からも拍手が起きました。
その後、外で物販に祥子さんが直々に立ち、サインをしてくださるという大盤振る舞い。祥子さんは何と僕の名前を覚えてくださっていて(これだけライブに通い、ブログでライブレポを何本か書いたお陰だと思いますが)、しっかり名前入りのサインを新しいCDに入れてもらいました。ちなみに僕は当日「Sweet Serenity」のツアーTシャツを着て来たのですが「ああ、懐かしい、着て来てくれたんだあ」と祥子さんに言われてこれまた満足(笑)。我が遠征に悔いなし、です。
というわけで、今回も心ゆくまで楽しませていただきました。ライブ友達ともたくさんしゃべれましたし。早くも来月、10月のライブ(ともに予約済み)が楽しみです。