美徳の不幸 part 2

Pity is akin to love.

ポートレイトの誘惑

僕は昔から、写真を撮るのも見るのも好きで、しかも、人間が写っているもの、ポートレートの類が好きだ(エリオット・アーウィットが一番好き)。
絵画の方も、リアリズムの傾向が強いものを好んでいると思う(初めて自分で買った画集は、ホルバインのものだったか。クリムトも好きなのだが、実はクリムト肖像画は、背景を除くとすごくリアルなものだと思う)。
さて、今日ふらっと入った本屋で、一目惚れして衝動買いした画集が、諏訪敦さんのもの。

どうせなにもみえない―諏訪敦絵画作品集

どうせなにもみえない―諏訪敦絵画作品集

ぱらぱら見て、いくつかの絵に文字通り釘付けになってしまい、その場で購入。彼の絵は、単に似ているというのを超えて(当たり前だが)、物語を執拗に練り込もうとしているように感じた。事故死した娘の肖像画を描いてくれと依頼され、その依頼主の両親のデッサンまで執拗に取り、それを今はいない娘の肖像画に活かそうとする執念、老衰の大舞踏家の大野一雄の死にいく過程(としか見えない)デッサンなどは、見るだに空恐ろしくなる。
あと、美人画家の松井冬子さんをモデルにした連作があるのだが、解説にもあるように、「絵空事」として描いているのがすごい(立ち読みでこのすごい美女は、と思ったら松井さんでした。松井さんのある種の業の深さを的確に描写している作品だと思う)。
そういえば、リアリズムの絵の表紙が気に入って、こういう雑誌も以前衝動買いしたんだよね。
アートコレクター 2010年 10月号 [雑誌]

アートコレクター 2010年 10月号 [雑誌]