美徳の不幸 part 2

Pity is akin to love.

わかりやすさの「勝利」

今日、読んじゃいましたよ、杉浦さんのこの本を。

オタク女子研究 腐女子思想大系

オタク女子研究 腐女子思想大系

もちろん、細かい間違いや、ツッコミどころは至る所に見られるけど、文章が軽やかで読みやすい。そして敢えて強引なカテゴリー分けをして見取り図を提供するなど、「わかりやすさ」に徹しているところは評価せねばなるまい。
あと、彼女を「腐女子としてぬるい」と切り捨てるのは簡単だが、多少知識がなくても(趣味の世界には、どこでも恐ろしいほどのマニアがいるものだ。趣味の世界を語ると、そういう人のツッコミが来るよね。例えばこの人とか。でも、これは学問でも同様。僕も昔「許可制じゃなくて認可制」「勅任官じゃなくて親任官」とか、某学会発表で偉い先生に突っ込まれ平身低頭したことあるよ)、「要点」さえ外していなければ、それほど非難されるものでもあるまい。でも、確かに重要な作品をはしょりすぎだな(星矢とかサムライトルーパーとか)。誰か側に「あれも入れたらどうですか」というアドヴァイスを出すブレインがいれば良かったのに。

ですから、今後はこれを正しい意味で「踏み台」として、もっと「濃い」クロノロジカルな通史を誰かが書いてくれるのを待ちます。重要な雑誌や作品の年表を中心とした作りの、資料的な価値の高いものを。

でも「ほとんどが異性愛者」で「彼氏・夫もいたりしつつ」「複数の自分を軽やかに楽しんでいる」腐女子というライフスタイルを称揚しているのは、やはり本田透さんへの当てつけなんだろうか(笑)。こういう「ぶちあげ方」、僕個人としては面白いし、なるほどと思ったけど。
全体的な感想としては、紙屋研究所さんとほぼ一緒ですね。

追記:やはりこの本の一番の問題は「負け犬」や「文化系女子」を仮想敵として、それに対抗する存在として「腐女子」を描写してしまったこと、これに尽きると思う。そんな「対立」、ないよね。