美徳の不幸 part 2

Pity is akin to love.

初キャラメルボックス

今日は、大阪京橋の「シアターBRAVA!」に行き、初めて演劇集団キャラメルボックスの公演を見た。この劇団は劇伴音楽に、僕が20年来ファンのzabadakの音楽をよく使っており、zabadakファンの間でもよく知られているのだが(キャラメルボックスzabadakを知ってファンに、というルートも多い)、僕は今まで一度も見たことがなく、今回たまたま友人がチケットが余っているというので手を挙げて譲っていただいたのだ。
演目は「サンタクロースが歌ってくれた」というもの。特に今回は、劇団結成25周年ということで、この劇団を「卒業」したとされる上川隆也近江谷太朗が古巣で十数年ぶりにこの劇をやる、ということで、ファンの間では話題になっていたようだ。会場に到着したら、客層は大体30代くらいの綺麗めのOLさんが多く、ちょっと怯む(笑)。あと、思った以上に年配の方も多かったなあ。娘に連れられてきた、というお母さんもちらほら(少なくとも僕は2組目撃)。女性が8割というところか。ストーリーは

クリスマスイブの東京。彼氏のいない「ゆきみ」は、池袋の映画館で友人の「すずこ」と待ち合わせ。しかし、「すずこ」が約束の時間に来なかったため、一人で中へ。映画のタイトルは『ハイカ探偵物語』。大正5年、芥川龍之介平井太郎(後の江戸川乱歩)が怪盗黒蜥蜴と戦う話だった。ところが、 芥川が黒蜥蜴を追い詰めた場面で、黒蜥蜴が消失! どうやら、映画の外に逃げたらしい。芥川と太郎、そして警視庁の菊池警部は、黒蜥蜴を追って、映画の外に飛び出す。そして、「ゆきみ」に現代の東京の案内を頼む。一方、「すずこ」が遅刻して映画館に辿り着くと、中からメイド服の女が飛び出してきた。 彼女は、映画の中から逃げてきたと言う……。(公式ページから引用)

というもので、要するにメタフィクションですね。劇中劇(正確には劇の中で上映されている映画)から、その劇中劇の主人公たちが舞台に現れ、その舞台を通り越してそれを演じる俳優自体(たとえば上川隆也に「戻る」)になったりと、アイデンティティや場所が入り組むストーリーなのだが、それをある種の勢いで見せ切ってしまうのはさすが、と思った。この作品が繰り返し上演されてているのも納得。メタフィクションというジャンルは、ついつい小難しく分析したくもなるが(アイデンティティとか象徴とか、トポスとか、クロノロジカルな逆順とか、それっぽい言葉は浮かぶ。大昔、シャルロット・ゲンズブール主演のメタフィクションメルシー・ラ・ヴィ [DVD]』を見たときも小難しい理屈を映画館の中で考えていたのを思い出した)、これは一種の「ファンタジー」と考えれば、語弊があるがあまり頭を使わずにそのまま楽しめる娯楽大作だと思う。
とにかく、生の俳優さんたちの舞台を見るのは久々で、やっぱり演劇って良いものだなあ、と改めて感じ入ってしまった。特に、上川隆也のかっこよさは、男ながらしびれた。名前も似ているので、勝手な親近感を今までも持っていたのだが(笑)。
全体的な感触だが、友人の学生劇団の公演の感触を思い出した。というのも、この劇団は、結構笑うシーンが多く、それが吉本新喜劇的なお約束というか、悪く言うと内輪受けという、小劇場的なノリをこんな大きな舞台でもやってのけたからだ(僕は初めてだから、どの人が古参なのかとかよく分からないから、半分しか笑えなかったけど)。でも僕はとりあえず満足。パンフレットも購入したし。これから、これをきっかけにプロの俳優さんの舞台にちょくちょく足を運んじゃうかも(金が飛ぶ・・・)。