美徳の不幸 part 2

Pity is akin to love.

詩人

同僚の加藤先生から、訳詩集をいただく。ありがとうございます。

雨の言葉―ローゼ・アウスレンダー詩集

雨の言葉―ローゼ・アウスレンダー詩集

僕は全く「詩心」のない人間で、思潮社の本なんて、大学生の時買った『吉野弘詩集 (現代詩文庫 第 1期12)』以来だと思う。
この詩人ローゼ・アウスレンダー(Rose Ausländer 1901-88)はドイツ系ユダヤ人の女性詩人。アメリカとドイツを往復した数奇な人生を歩んだそうな。アメリカへの亡命・移住は珍しくもないが、彼女が珍しいのは、1920年アメリカに移住したにもかかわらず、1939年にあえて「祖国」に戻ったということだ。

彷徨い揺らぎ
ブランコにのって
ヨーロッパ アメリカ ヨーロッパと

私は住むのではない
私は生きるのです(伝記的メモ、本書p.21)

アドルノは「アウシュヴィッツの後、詩を書くのは野蛮」と呟いたが、アウスレンダーは「〈詩を作ることはまだ可能だ〉絶望的な希望から生まれた言葉」(希望Ⅳ、p.25)と書き記している。我々はどちらの声を聞くべきなのだろうか。