美徳の不幸 part 2

Pity is akin to love.

ゲットーではなく

研究室で以下の新書を読み終わる。umeten君が教育者なら絶対読むようにと迫ったから、というわけではないが(そもそものこの本購入のきっかけは卒論で「発達障害」を取り上げたのがいたせい)。

発達障害の子どもたち (講談社現代新書)

発達障害の子どもたち (講談社現代新書)

確かに読みやすく、啓蒙書として上出来の本だと思う。お勧め。

いわゆる発達障害とか、アスペルガー症候群とかについては、僕も一応大まかな知識は持っていたが、そのような子どもがどのようにフォローされるべきか、そして教育現場や医療現場ではどのように扱われているか、ということには殆ど無知だったので、大変勉強になった。
乱暴にまとめるとすれば、この本の眼目は、「特別支援教育というのはゲットーではなく、適切な処置なのである」ということだと思う。自分の子どもが自閉症とかアスペルガーと診断され、特別支援教育に「回される」ことを恐れる親御さんは多いだろう。しかし、その処置は、何よりも子どもの利益のためである事を著者の杉山先生は強調する(親の「気持ち」は二の次ということ)。濃やかなフォローもされない環境(普通学級とはそういう環境である)に「放置」されるより、初期からちゃんとした指導を受ければ、徐々に社会性は付けられることが多いそうだ。
「通常学級の中で周りの子どもたちから助けられながら生活することは、本人にも良い影響がある」というのはほとんど間違いで、よい影響があるのは、周りで世話をする子どもたちであり、当の障害を持った本人にはメリットがないというのも、ある意味目から鱗であった(pp.200-1)。
僕も早く「特別支援学校の小学部が少人数で、中学部では一挙に増え、高等部では収まりきれないほど人数が増える」(p.204)という現状(これは問題の先送りのツケが顕在化した姿である)が変化することを願う。