美徳の不幸 part 2

Pity is akin to love.

人工多能性幹細胞

僕は別に生物学の専門家ではないけど、宗教や生命倫理には関わりのある人間なので、今朝の朝日新聞の一面記事には驚いた。いか、記事の一部を引用。

人の皮膚細胞などに複数の遺伝子を組み込み、各種の組織のもとになる万能細胞(人工多能性幹細胞=iPS細胞)をつくることに、京都大・再生医科学研究所の山中伸弥教授らが成功した。21日、米科学誌セル(電子版)に発表する。米ウィスコンシン大も同日、米科学誌サイエンス(電子版)に同様の成果を発表する。人間の体細胞から万能細胞ができたことで、臓器や組織を補う再生医療が現実味を帯びてきた。

 代表的な万能細胞の胚(はい)性幹(ES)細胞は、生命の萌芽(ほうが)である受精卵を壊してつくるので批判が根強い。山中教授と高橋和利助教らは昨年8月、マウスの皮膚の細胞に四つの遺伝子を組み込み、世界で初めてiPS細胞を作製。受精卵を壊す必要がなく、倫理問題が少ないとして注目された。

受精卵(余剰胚)を使って今まで行われてきたES細胞の研究は、命の素を壊すと非難されてきたが、この成功はその「疚しさ」をある程度取り除く効果を持つだろう。ある程度、と但し書きを付け加えたのは、脳死臓器移植をなかなか進展させない「何か」が日本人のサイレント・マジョリティの意識の奥底に眠っていると僕が思うからだ。
ただ、このiPS細胞が成功しても、エンハンスメント(医学・薬学的な人間能力の増強)はどこまで許されるかとか、金持ちばかりそういうものの恩恵に与れるんじゃないのか、という問題はずっと(永遠に)続くだろう。