美徳の不幸 part 2

Pity is akin to love.

毒舌

電車の中で、養老先生の本を流し読みしているが、これはひどいね。何がひどいかというと、その毒舌振りが、だ。

無思想の発見 (ちくま新書)

無思想の発見 (ちくま新書)

僕からすると、何故養老先生の本があれだけ売れるのか、実はよく理解できない。だって、『バカの壁』にしたって、あれはひどい「悪口」の本なんじゃないの?この本も「勤勉なバカ(この本では「有思想」と表現されているが)ほど始末に困るものはない」という古くからのフレーズを養老的に解いている本だと僕は思う。こんな本を読んで喜ぶのは相当マゾだと思う。
この本は恐らく語りおろしで、ちゃんと裏を取った論文じゃない「思いつき」だから、いくらでも突っ込むことはできるけど(例えば中国に対する臆断とか)、そういう読み方はそれこそ「馬鹿らしい」ことになるだろう(このあたりの意地悪さが、さすが養老先生だと思う)。そもそも「身も蓋も無さ」がこの本の真骨頂だし。
でも、無思想だからこそ最強の強さを発揮している自民党など、「日本の無思想」という思想は、検討の余地がある。戦前の思想史をやっている身としても、戦前の言論人のあまりな「いい加減さ」に呆れてしまうことがあるが、思想への不信(不在)と実感信仰(こうなると、丸山真男の議論だ)の補完的関係という指摘は、別に養老先生が初めてじゃないけど、改めて考えさせられた。