美徳の不幸 part 2

Pity is akin to love.

神国思想への思いこみ

電車の中で、読み終えたこの本は、非常に良質の入門書及び目から鱗の良書。おすすめ。

神国日本 (ちくま新書)

神国日本 (ちくま新書)

普通我々は、鎌倉末期の蒙古来襲あたりから「神国日本」というナショナリスティックな感覚が盛り上がって、南北朝の時の北畠親房の『神皇正統記』あたりで、「世界に比類ない神国日本」の思想ができたと思いこんでいるが、実はそうでもないということをこの本で教えてもらった。ようするに、北畠親房は「日本は神の国(しかもその神は仏の垂迹)」とは言っていても「世界に冠たる神の国」とは言っていないのだ(そういうことを言い出したのは、幕末の国学者と戦前の狂信的な国粋主義者の方なのだ)。ここは重要。あと、浄土教禅宗などが、「日本の神を無視する」=「神の権威を笠に着る中世の権門を否定する」という理由付けで迫害された、という指摘も重要だろう。