美徳の不幸 part 2

Pity is akin to love.

zabadak 「私の罪は三千年」第20回ライブ@郡上八幡照明寺


このところ、年に一回は岐阜の郡上市に遊びに行っています。というのも、僕がずっとファンを続けているzabadakが、ここの照明寺というお寺で年に一回ライブをする企画があり(写真は開始直前の内陣の様子です)、関西のファン仲間の車に乗せてもらってお邪魔しているのです。ただ、今年は、ご存じの方も多いでしょうが、このバンドの核であった吉良知彦さんが7月に急逝され、吉良さんのいないライブとなりましたが、パートナーである小峰公子さんをミュージシャン仲間がサポートして、予定通りにおこなうこととなったわけです。今日のこのライブには、全国各地から(確認したわけではないですが、僕の知り合いで仙台からいらした方もいました)約120名程が参加しており、ライブの最中「この中で地元の方は?」という質問に客席はシーンとする、というくらい津々浦々からやってきています(僕もその一人ですが)。
以下では今日のセットリストと、僕がメモしたものを書き記していきます。
17時ちょうどにお寺の鐘が鳴らされ、ライブ開始が告げられました。登場したのは、舞台に向かって左から鬼怒無月(G)、小峰公子(Acc. / Vo.)、向島ゆり子(Vl.)のお三方。
1)Birthday
この曲からスタート。鬼怒さんもバッキングヴォーカル(今日はヴォーカリストとしての鬼怒さんが炸裂)。
2)生まれては別れにむかうわたしたちのために
ああ、いきなりこんな泣ける歌を、というのが率直な気持ちでした。

実際公子さんも少し涙声で「(虚空を指しつつ)そのあたりに吉良君がいると思います。鬼怒さん、ゆり子さんと、(助けてくれる)ミュージシャンに恵まれています」とのMC。
3)にじ・そら・ほし・せかい
ある意味似たテイストの曲が続きます。
4)グスコーブドリの伝記
「ここではまずらしくインストを」といって始まったこの曲、偶然ですが、今日は宮沢賢治の誕生日だそうです。向島さんがヴァイオリンをウクレレみたいにしてつま弾いていて、そのテクニックに唖然。でもつま弾くだけあって、チューニングが狂いやすいそうです。
5)線香花火
公子「線香花火好きなんですよね」、鬼怒「今夜やりましょうか」、向島「夏に欠かせないよね」とおっしゃっていましたが、なさったでしょうか?(笑)
6)幸福の王子
iPhone用のアプリ絵本「幸福の王子オスカー・ワイルドのあれ)」への曲。ツバメ視線で書いてみたと公子さん。大人になってから読むとあの童話の悲哀さがより胸に迫ってきたとのこと。
7)月と金星
このあと、郡上が初めての鬼怒さんに公子さんが「郡上はどうですか?」、鬼怒「良いか悪いかでいったら、良いとしかいいようがない(会場爆笑)」公子「なんでそう鬼怒さんは二分法なの?」という会話が笑えました。あと、お堂の中にいるのはほぼ県外のファンばかりというのを知って鬼怒「zabadakの経済効果とかあるんじゃないの。ここまでファンを呼び寄せて、まるでハーメルンの笛吹きだ」というと公子さんが「その笛はPolandのだ(会場爆笑)」というやりとりもありました。
8)河は広くても
最新アルバムにある、トラッドをカヴァーしたもの。ここで公子さんが少し涙ぐんで歌が詰まると、歌詞を異常に覚えているお姉さん軍団が自然発生的にコーラスを取りフォロー。こんな事するファン、まあ他には見たことないですよね(笑)。公子さんも「泣かないぞ、行くぞ、これからも歌っていくぞ」と自分を奮い立たせて、次に歌ったのが
9)樹海
でした。7拍子の難曲。ここで、鬼怒さんが歌いまくるという、ある意味レアなシーンを我々が拝見することに。歌い終わったあと、公子さんが「この曲をやろうといった時、鬼怒さんの侠気(おとこぎ)を見ました」というとすかさず「今はちょっと後悔しています(会場爆笑)。自分の唾で溺れそうになる瞬間があって」。
10)はじめてうたったうた
この曲の最後の「うたうたえ〜」というリフレインは、観客も一緒に合唱。ここで、吉良草太郎君(B)in。持ってきたのはお父さんから受け継いだ白いフレットレスベース。鬼怒さんの隣に座り、彼だけはエレキベースなので(他の三人は完全にアンプラグドでした)、アンプに繋いで始まったのが
11)双子の星
でした。これも宮沢賢治つながりですね。公子さん「草太郎はこの20年間毎年この郡上に来て、亡くなった前住職さんのことを〈夏のおじいちゃん〉と呼んでいた程でしたが、果たして〈冬のおじいちゃん〉はいるのか(笑)」「歌詞を間違えてしまい、親として面目ない。(たぶん)吉良君がここに来たのかも(だから間違えた)」と。
12)Still I'm Fine
当たり前ですが、これを公子さんのリードヴォーカルで聴いたのは初めて。草太郎君はバッキングヴォーカル。
13)いのちの記憶
これはNHKみんなのうた」で流された曲。最後の三拍子はやはり手拍子を叩いてしまいます。公子さん「ここにいる皆さんはあとで、NHKのサイトに行って、この曲をリクエストするんだぞ〜(笑)」鬼怒さん「俺もやりますよ(会場爆笑)」
14)Deir Paidir
15)相馬二遍返し
何とこの公子さんの故郷の民謡で、向島さんの「合いの手」が間違ってしまったことによって(向島さんに吉良さんが「降りてきた」のかも、と公子さん)公子さんが歌に入れず、ドタバタするトラブルが!でもそれを周りのファンとミュージシャンがすかさずフォロー。
16)Easy Going
この曲で、公子さんはアコーディオンを抱えたまま、客席の方に降りてきました!これを見て、僕みたいに、公子さんのソロライブの時、吉良さんが客席に飛び降りていって、あとで楽屋で「誰のコンサートだと思ってるのよ!」とダメ出しされた(この話は、ベーシストの内田ken太郎さんの誇張が入っているそうです)というのを思い出した人は少なくないはず(笑)。
本編はここまでで、以下はアンコールです。
17)雲の言葉
この曲、元々、このお寺の前住職さんに「発注」されて書かれたもので、このお寺が運営している子供の合唱団「照声会(さすがに声明会とか唱名会とは名付けられなかったのでしょう(笑))」と一緒に歌うという企画でした。葵おそろいのポロシャツを着たお子さんたちと、そこそこいい年の(というか、彼らの親世代の)我々とのコラボ。久々に小中学校の皆さんの声を聴いて「え、子供の声ってこんなに美しかったっけ」と思いました。子供との企画は、「noren wake」のacid angelsを思い出させました。そして最後は
18)遠い音楽
で締め。これも草太郎君がバッキングヴォーカル。ちょうど陽も落ち、外からは「リーリー」という虫の音。この曲にあまりにもおあつらえ向きの舞台で、静かに今日のライブは終了。

そして終演後、今月に行われた吉良知彦さんの「お別れ会」である「katami wake」で配られた「形見(『音』というアルバムのマスターテープの断片)」をいただくことができました。僕、出張で出席できず、気になっていたのですが、嬉しかったです。
で、勢いで、本当は行くつもりがなかった明日の公演も行くことになりました(キャンセルが出て席ができたため)。俺って「押し」に弱いなあ、流されやすい性格だなあ(たぶん、ファシズムの世の中になったら、「Easy Going」の歌詞のように、すぐに友達を売ったりしちゃいそう)、と今更なから噛みしめながら、今夜はここまで。