美徳の不幸 part 2

Pity is akin to love.

鈴木祥子レコーディングライブ@音響ハウス


僕が凡そ四半世紀、ファンを続けているシンガーソングライターの鈴木祥子さんですが、この度はある意味「前代未聞」の試みのライブが開かれました。「鈴木祥子マンスリー・レコーディング・ライブ第1回 しょうことスタインウェイの夕べ〜D-Durは復活の調べ〜」と題されたそのライブは、その名の通りレコーディングをするというライブで、何と参加者にはその場で焼きたてほやほやのCD-Rが渡される、というもの。こんなコアな内容のイヴェントですから、当然年齢層も高く「あの人の顔、どこかで見た事があるな」と思うようなメンツばかりが集結、というライブでした(具体的には、前回の世田谷でのライブでお見かけした人々が再集結、といった方が手っ取り早いか)。

場所は新富町の「音響ハウス」。当たり前ですが、レコーディングスタジオに入るのは初めて。楽器はピアノのみで(Steinway & Sonsのもの。ライブタイトルもそこから)、コードはDのみという「縛り」でのこのライブは、「レコーディングスタジオ」と「コントロールブース」の二箇所にファンが分けられ、僕はスタジオ組だったので、余計な音は一切出せないという緊迫したライブでした(靴も、音が一番出ないものを選んできました)。英作文の例文で憶えさせられた「針が落ちても聞こえただろう」という文章を思い出す程の静けさ。コントロールブースの方は、ガラスで隔てられているので(その代わりマイクの音が直接流れ、映像もカメラで大きなスクリーンに映されていたそうです)、結構くつろいだ感じで、いつものライブとあまり変わらなかったと友人がいっておりました。

レコーディング前提ということで、MCもほとんど挟まれず、いつも以上に淡々と進んでいきました。以下で、そのセットリストを挙げておきます。実は、事前に公式サイトでセットリストが発表されていたのですが、当日になって「歌う気分になれない」ということで、いくつかの曲が外されました(「Sickness」「いつかまた逢う日まで」が外されたはず)。
祥子さんはこの日、白と黒の斜めのストライブのブラウスと、ダークなスカートで登場。着席してすぐに演奏がスタート。

1. VIRIDIAN(VIRIDIAN/1988)
2. ひとりぼっちのコーラス (風の扉/1990)
3. Love Child (Hourglass/1990)
ここまで一気に演奏して、ようやく我々も拍手ができる状況に。阿吽の呼吸というか、祥子さんが楽譜を横に投げ捨てるときはそのまま続けるとの合図だと我々も承知して、それをしないときは小休止、ということで拍手をしました。
4. Goodbye, my friend (Radiogenic/1993)
5. プリヴェ(私小説/1998)
6. 区役所に行こう (あたらしい愛の詩/1999)
7. 5years,/AND THEN...(Sweet Serenity/2008)
ここで祥子さんが、縛りのコードである「D-Dur」について解説。祥子さん曰く「このD-Durというコードは、バッハとか、宗教音楽でよく用いられるものですが、復活、という意味があるそうなんですね。とても明るく開放的なコードなんですけれども、自分の今までの人生とか、歌にその人生は書かれていて、それを歌ってきたのですけど、私はご存じの方も多いでしょうが、約1年半、2年弱音楽活動を全くやらなかったという時期がありまして、そのときがご心配をおかけしましたが、そこからの復活、といったら大げさなんですけども、また音楽に向かう気持ちになった今の自分の気持ちをD-Durのこの響きに込められたらな、それを分かち合えたらなと思って、今日D-Durの曲ばかりやっているんですけど、大丈夫?飽きてないですか?(会場爆笑)」とのことで、当然その「復活」を言祝ぐために我々は集結しているのですから、大丈夫に決まっています(笑)。逆に僕などは音楽理論が判っていないせいもありますが、「これらの曲、全て同じコードの曲なのか」とびっくりしたくらいです。「というわけで、また同じコードの曲が続きます」と演奏が再開され、
8. 最後のファーストキッス(水の冠/1989)
9. モノクロームの夏(シングル『TRUE ROMANCE』のカップリング/1995)
10. だまって笑ってそばにいる女 (私小説/1998)
11. LOVE IDENTIFIED (鈴木祥子/2006)
12. 日記 (私小説/1998) 月光(ベートーベン)を挟んで
13. Silent Dream(Hourglass/1990)
14. どこにもかえらない (Long Long Way Home/1990)
ここまでが予定されていた録音タイム。これ以降は双方緊張もほぐれ、自由な雰囲気で聞くことができました。
15. GOIN' HOME (SNAPSHOTS/1995)&Gimmie some Life(Love, painful love/2000)
この曲が終わると祥子さんは立ち上がり(実際、事前に発表されていたセットリストのラストはこの曲でしたから)、スタジオから退出。我々も今日はこれで終わりかな、と思ったら、すぐに祥子さんが再び現れて、予期せぬ「アンコール」タイムに突入。しかも「何かリクエストあります?」といきなりリクエスト合戦に。最前列から数名が声を挙げ、採用されたのは以下の2曲。

1st encore
16. 夏のまぼろし(Long Long Way Home/1990)
祥子さんはこの曲を少し忘れかけていたのか、ジャズっぽいアレンジ(というか、新しいメロディ)が途中に挿入されたりして、『のだめカンタービレ』のエピソード(のだめがコンクール直前に聴いた音楽が課題曲に混じってしまう、というエピソード)を少し思い出しちゃいました。
17. My Sweet Surrender(my Sweet Surrender/2010)
この曲をリクエストしたのは、知り合いの方。最初祥子さんは「あ、ピアノで弾いたことがないな、コードが判らない、ごめんね」といいながら、音を確かめているうちに「あ、判ってきた」といって、そのままノリノリで歌いきってしまいました。ナイスリクエスト!
この2曲で祥子さんは再びレコーディングスタジオを退出。さて終わりか、と思ったら、またまた登場のダブルアンコール。コントロールブースにいた人々も、続々とレコーディングスタジオに入ってきて、全員が一堂に会してのアンコールになりました。

2nd encore
18. トルコ行進曲
最近祥子さんはバッハやモーツアルトの曲を練習しまくっているとブログにお書きでしたが、まさかこの曲を弾いてしまうとは・・・。
19. 海辺とラジオ(SNAPSHOTS/1995)
この曲も、夏に相応しい曲でしたね。歌詞は、完璧に歌詞を暗記しているファンがところどころ祥子さんに教える、ということに。

これにてライブは完全に終了。その後は、CD-Rをもらって退出。僕とライブ仲間は、どうせその後飲むのだから最後でいいや、ということで最後まで残ったので、受付をなさっていた祥子さんのお母様と話すことになり、友人の一人はある曲の話題になった時お母様に「どんな曲だっけ?ちょっと歌ってみて」と無茶振りされたので笑いました。祥子さん自身が「復活」といっていたわけですし、ファンとしてはどこでも好いからまたライブをして頂ければ、それだけで満足です。ライブの終わりに、今レコーディング中の新曲のさわりも聞かせてもらいましたし(菅原弘明さんとの久々の作業で、菅原さんらしいアレンジも聞こえてきましたし)、そちらの完全も首を長くして待っております。