美徳の不幸 part 2

Pity is akin to love.

「イラク チグリスに浮かぶ平和」

今日は、京都シネマで「イラク チグリスに浮かぶ平和」を見に行く。2003年のイラク戦争から2013年前の約10年間、あるイラクの家族を中心に取材したドキュメントで、監督は僕の高校同期でもある綿井健陽君。
内容は、これでもかと降りかかる戦争の惨禍。アリ=サクバン氏という「普通の庶民」とその家族が取材の中心だが(この一家は、前作「リトルバーズ」にも出てきた)、まず彼は2003年、フセイン政権がアメリカ軍の侵攻で打倒された際、「誤爆」で自宅を爆撃され、幼い子供を一度に3人も失う不幸を背負う。これだけでも悲惨きわまりないのに、綿井が彼の家を取材していくうちに、二人の叔父と二人の兄もイラン・イラク戦争で戦死していることが分かる。そして、何とアリとその弟も、治安状態が悪化したバグダッドで、相次いでテロの犠牲になる。つまりこのサクバン家は、イラクの悲惨な出来事を全て経験してきた家なのだ。
最後は、アリの父親(今年1月になくなったそうだ)が「自殺が罪でないなら、今すぐ自殺して息子たちに会いたい」とまでこぼす(彼は息子4人も非業の死で失っている)。この前、ISに日本人が殺されたことでこの地域に関心がまた一瞬盛り上がったが、10年ほど前、フセイン政権打倒に協力したことを我々はもう忘れてはいないか?