今日の院ゼミでは、上記のテーマの論文を読んで、いつものように自由討論(だらだらトーク)。
読んだのはここに所収の伊藤喜良「王権をめぐる穢れ・恐怖・差別」というもの。要約は古代史専攻のY田さんにしてもらう。この論文は、中世において「穢れ」概念が肥大化して、それに伴って、それまでは差別されていなかった職能集団(いわゆる「穢れ」に関わる)が差別されていく、そしてその裏腹の関係で、穢れをそのような集団に背負わせて天皇は「神聖化」していく、という趣旨だったと思うが、うまくは言えないけど、果たしてそうなのか、という疑問が浮かんで、ゼミでもそのあたりを討論。「穢れ」概念の古典的分析としては、やはりメアリー・ダグラスの「穢れとは、秩序を乱すもの、分類不能なものを指し、その排除によって秩序が正常化・回復されるのだ」という有名なテーゼがあるが、この時期の天皇の神聖化には、仏教(特に密教)的呪術が大いに関与しているし、「王権」を支えるものとしてはやはりそのような宗教的コスモロジーを等閑視することはできないと思う(この論文にでも多少は言及されているのだが)。構造として「浄・穢」の二分法的世界観が支配していると言っても、例えば天皇の触れた食器は再利用せずそのまま捨てたというのなどはまさに「斎・忌(ともに「いむ」。ラテン語のsacreもダブル・ミーニングだったと思う)」という両義性ではないのか、などと思ったのだ(つまり。「浄」だけではない)。僕は穢れの問題は、その穢れたとされるものが持つポテンシャルの「絶対値」が重要だと思っている。あるときはプラスに振れて、あるときはマイナスになる、というような。
まあ、このような問題は解決などしないのだけど。僕ももっと様々な「穢れ」に関する論文を読んで研鑽を積まないとな・・・。
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