美徳の不幸 part 2

Pity is akin to love.

密やかな光

前々から気になっていた映画をようやく借りて見た。宗教がらみと聞いていたので、これは見ねばと思いつつ見逃してきた。ちなみに「密陽」というのは実在の地名。僕は11年ほど前に住んでいたところの近くなので、方言は何となく分かる(いわゆる慶尚南道訛り)。

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ネタバレはできるだけ回避しつつ、少しだけ感想を述べたいが、キリスト教の「許し」という「もっとも実行が難しいキリストの教え」がメインテーマとなっている。許し難い相手を許すにはどうすればいいか。そして、もっと大きな問題は、自分を取り巻く理不尽な運命をどう許す(受け入れる)かという問題である。主人公はあまりにも過酷な自分の運命と、二重の神の裏切り(理不尽な運命そのものと、その理不尽さを克服しようとする努力を挫折させる)に遭い、もがき苦しむ(このあたりの演技が、チョン・ドヨンにカンヌの主演女優賞を取らせた)。このあたりに監督の宗教批判を見るのはある意味たやすいが、僕は「許そうとした傲慢さを打ち砕かれる主人公」というもう一つのテーマを深読みしてしまった。
にしても、主人公を見守る「田舎の気のいいアジョシ(おじさん)」役のソン・ガンホは素晴らしいね。彼の演技そのものも素晴らしいけど、彼の役が、この映画の中で「密かに降り注ぐ太陽の光」のように常にヒロインを見守っているのだ。どれだけ我慢強いのかw。ツンデレとかヤンデレとか、しょーもない言葉を使うのも憚られるほど面倒くさい主人公を見守っているんだぜ。この人物造形によって、この映画は完成したと言えるだろう。
にしても、これに限らず、イ・チャンドン監督はきつい作品ばかり作るよなあ・・・。