美徳の不幸 part 2

Pity is akin to love.

ルポルタージュを読む

このところ、戦争の証言とかを大学では読んでいるが、久々にアップトゥデイトなルポを読んだ。

g2 ( ジーツー ) vol.6 (講談社MOOK)

g2 ( ジーツー ) vol.6 (講談社MOOK)

この雑誌に掲載されている、安田浩一さんの「在特会の正体」というルポが目当て。このルポは、在特会の会長である桜井誠(仮名)が、高校までは地元でさほど目立つ生徒でもなかったことを同級生や地元の人から聞くことから始まり、その後在特会の集会で取材された複数の会員の声から構成されている。読み終わったときの感想は一言で言うと「期待通り、でも予想通り」というもの。期待通り、というのは、在特会に参加している人々の主張や参加したきっかけをしっかり取材しているところ、でもその言葉は今まで嫌々ながらネットで読んできた内容からほぼ推測されるものだった、ということ。今までの印象がひっくり返るものを期待しても詮無いことだが。桜井がルサンチマンを活動源にしてきたのは、同号に掲載されている森功さんの橋下徹府知事の取材と同じ印象(ともに、生育歴から掘り起こそうとしている。生育歴から全てを判ったつもりになることは禁物だが、あまりに二人の境遇が似ているので、なんだか変な気持ちになった)。
でも、重要なのは、高校では目立たなかった少年が、何らかのきっかけを与えられたら「桜井誠」になっちゃう、ということだ。貧乏画学生が「第三帝国」を作ってしまった、というのと比べるのも大げさだが、残念ながら、そういう人間を「波に乗せてしまった」のが今の世の中だ、というのは痛切に感じる。
他のルポも力作揃い。最後に、ピースボードを扱った『希望難民ご一行様 ピースボートと「承認の共同体」幻想 (光文社新書)』を書いた古市憲寿さんの文章が載っているが、この人はテイストが一貫しているね。余計なこと言わなきゃ良いのに、っていうタイプ(笑)。特に脚注で、根が真面目な僕は「あーあ」と思ってしまう。内容は前著同様まあまあまともなのに、半畳を入れたがるのは根っからなのかな?