美徳の不幸 part 2

Pity is akin to love.

クロッシング

今日は、みなみ会館で妻と一緒に脱北映画「クロッシング」を見る。

内容は何となく想像していたのだが、想像以上にきつい内容。こんなぬくぬくした社会に生きて済みません、という気になる。以下ちょっとネタバレ。
まず、生活の描写が結構リアル。といっても、僕も実際に見たわけではないけど、向こうの家とか市場とかってこうなんだろうな、と思わせるセットが組まれてる。あと、強制(矯正)収容所の描写。これがきつい。下手すれば単純なプロパガンダになっちゃうところだけど、リアルな描写だけに留めて声高に体制批判をしない慎み深いところがこの映画の深みというものだろう。
出演者についていうと、主人公のチャ・インピョ川口能活似のイケメン)とその息子役の子役シン・ミョンチョル、その息子の初恋の相手チュ・ダヨン(ちょいと成海璃子似)の三人は文句なし。
あと、僕はついついこの映画の中のキリスト教の描写が気になってしまう。中国での貿易で儲けた一家が出てくるが(その一家が初恋の相手の家)、その家は中国でキリスト教に入信してそれをひた隠しにしている、という描写がある(そのことがこの一家の悲劇の原因ともなる)。向こうは金日成金正日という「現人神」を奉じねばならない宗教国家だから(敢えてこういう表現を使う。今の北の体制は極端な天皇制の戯画だ)、このような「異端」は許されないわけだ。結局死後に一家がまた集える「天国」を思うことだけが、彼らに許された最後の宗教となる。
あと、南に亡命した主人公が働く工場の社長がキリスト教の篤信者として描かれている。その彼に主人公が「神様も、豊かな国にしかいないんですか」という叫びは胸を切り裂く。
それと関係あるのかも知れないが、エンドロールを見てみると、「オンヌリ教友(だと思う)」という言葉があり、これは恐らく、現在精力的に海外にも宣教しているオンヌリ教会のことだろう。僕は詳しく知らないが、脱北者支援などもやっているのかも。