美徳の不幸 part 2

Pity is akin to love.

「この空の花」鑑賞

このお盆休みは妻と映画鑑賞と決めて、昨日に続いて今日も映画鑑賞。今日見た映画は、大林宣彦監督の久々の作品である「この空の花」。上映会場は、京都みなみ会館。僕の自宅から最も近い映画館なので、自転車で向かう。
この映画、実験的な色彩が強く纏めにくく、ネタバレ、というのが難しい作品(だが、以下に多少のネタバレ有り)。
ドキュメントタッチの部分有り、時空間がクロスする描写もあり、劇中劇有り、敢えてチープに感じるような特撮部分有り、過剰なテロップやカメラ目線で「楽屋落ち」っぽい部分も有り(ぼくはシャルロット・ゲンズブール主演の「Merci, la vie!」という映画を思い出した)というごちゃ混ぜ状態で、まさに「映画」でしか表現できない「過剰」な作品であったのは確か。約2時間半という長い作品だが、冒頭の良い意味での「饒舌さ」に引き込まれて、それ以降はそれほど時間が気にならない。新潟県長岡市の花火と、長岡が近代に二度焼き払われた歴史(戊辰戦争と空襲)と、東日本大震災中越地震をクロスオーバーさせて「人の美しさ」というものを引き出そうとしたのがこの映画のテーマとは取り敢えず纏められるだろう。でも結論を「母」に収斂させるのには多少の違和感を持ったけど。
今回のキャスティングで改めて思ったのは、松雪泰子の美しさだね(笑)。それまで別にファンでもなかったのだが、くらっと行きそうになったよ。あと、主演を演じた一輪車少女の猪股南ちゃんの顔立ちって、これは大林監督が好きそうな顔だよなあ。共演の原田夏希もそうだし、蓮佛美沙子も寺嶋咲も同系統だと思う(ついでにいうと、過去の石田ひかりとかも)。山下清役の石川浩司(元「たま」)は似すぎで反則だと思った(笑)。もったいなかったのは筧利夫の使い方かな。大林映画にはたまにああいうキャラ(色んな場面に出てくるけど、ストーリー自体にはそれほど絡まない)が出てくるけど、もしかして監督のアルターエゴ?
同じ大林監督の『はるか、ノスタルジィ』というのが僕は好きなのだが(おっさんの都合の良いファンタジーだと僕でも思うが)、大林監督のモチーフに「清算し切れていない過去に振り回される(過去の人物が現在に乱入してくる)」というのがあると、今回の作品を見て確信した。非常に「精神分析」的な作風なんだな。